「原子力」に賭けるGoogleの野望。脱炭素化を加速する次世代型原子炉「SMR」とは

私たちの生活は、今やインターネットやAI技術なしには語れず、その影には膨大な量の電力を消費するデータセンターの存在が欠かせない。

そんななか「Google」は今年10月、小型モジュール原子炉(SMR)を開発する「Kairos Power」と、電力購入に関する世界初の企業間契約を締結したことを発表。再生可能エネルギーの積極的な活用で知られる同社の「脱炭素化」への取り組みは、今後さらに加速していく予感。

原子力に賭けた、Googleの真意

米新興企業「Kairos Power」が開発した次世代型小型モジュール原子炉「SMR」は、従来の大型原子力発電所と比べて安全性が高く、建設コストや期間も抑えられるという特徴をもつ。「Google」によると、SMRは簡素化された設計と堅牢な固有の安全性のおかげで、原子力の展開を加速するための新しい道を提供するとのこと。

同社は2030年までに初となるSMRを稼働させ、その後2035年までに複数基を段階的に稼働させる計画を進行中。これにより、最大500MWの電力を米国の電力網に供給し、より多くの地域社会へクリーンで安価な原子力発電の恩恵をもたらす狙いがあるという。

AI開発競争を制するのは
クリーンエネルギー?

また、Googleは「AIは膨大な科学的進歩の原動力となり、企業や顧客へのサービス向上、そして国の競争力や経済成長を促進している」と述べていることからも、今回のSMRへの投資が、AIや先進技術分野全体の進歩に貢献すると考えている。

しかし、AI技術の開発や運用には、膨大な電力が欠かせない。再生可能エネルギーが天候に左右されるという弱点からも、安定供給も解決必須の課題だ。そこで期待に拍車がかかるのが、SMR。天候に左右されず24時間365日安定した電力を供給できるため、AI開発をより加速させる可能性を秘めているというわけだ。「Google」はSMRの活用することで、エネルギー効率の高いデータセンターの運用を実現し、AI開発競争を優位に進めようとしているのかもしれない。

多角的なアプローチで
エネルギー問題に挑む

彼らが計画するクリーンエネルギーへの取り組みは、SMRだけにとどまらない。2023年には、「Fervo Energy」と共同で開発した画期的な地熱発電プロジェクトを完了。さらに、この地熱発電の規模を25倍に拡大するための新たな契約を米国の電力会社と締結している。

SMRと再生可能エネルギーを組み合わせた多角的なアプローチで、エネルギー問題の解決を目指す。これは、地球全体の課題に対し、企業が積極的に行動を起こしていくことの重要性を示していると言えるだろう。

👀GenZ's Eye👀

拡大し続けるAI需要の高まりとそれに伴う電力消費、そして原発回帰。人類がどんな未来に進もうとしているのか、巨大企業の一存から悟らずにはいられない。9つあると言われる「プラネタリー・バウンダリー(地球の限界点)」は、間もなく7つ目の限界を迎えようとしている。

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TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。