「次世代型エコビレッジ」は自然とハイテクの融合がキーワード
自給自足ですべてをまかないながら、都市生活にはない“自然との共生”をコンセプトにしたライフスタイル。ニューヨーク、サンフランシスコ、バンクーバー、メルボルン、コペンハーゲン…世界の大都市近郊には、地球に負担をかけない生き方を選ぶコミュニティがたくさんあります。
自然のエコシステムを参考に、人間にとって生活の基盤となる農業を基本体系としながら、持続可能な循環型のコミュニティを実現する生活。いわゆる「パーマカルチャー」がそれ。そこで、いま新しい動きが。エコビレッジも変わり始めているんです。
エコビレッジにハイテク導入
ここに紹介するのは、アムステルダム郊外に2018年完成予定で現在建設中のもの。「ReGen Village」と名付けられたこの村が、アーミッシュの暮らしのように文明を拒絶して生きる場所かといえば、むしろその逆。
ここは最新テクノロジーを融合して自給自足を実現させる、実験的コミューンをイメージしたほうが良さそう。アメリカ資本の不動産開発企業がカリフォルニアで始めたプロジェクトを、オランダの地で実現しようというのです。
地熱、太陽光、風力、さらにはバイオマスをエネルギーに変え、食料はもちろん、電気も、生ゴミの処理もすべてビレッジ内で完結。また、雨水や生活排水を浄化した水はアクアポニック(水耕栽培と魚の養殖を融合させたもの)へと応用させ、すべてを循環させる仕組みをつくりあげました。
「ひとつのシステムのアウトプットが別のインプットにつながる」、とは創業者James Ehrlich氏の弁。自然のシステムとテクノロジーとを合理的に繋ぎ合わせ、独自のシステムを構築したのがこのビレッジ最大の特長。
技術は最新のもの、けれど農業に密着することで豊かな暮らしを見直そうとする生活デザイン自体は、パーマカルチャーのそれとなんら変わりはありません。
テスラモーターズに例えられる
緻密なデータ戦略あり
ところで、この大がかりなプロジェクトがEV車専業メーカーとして有名なテスラモーターズの戦略に例えられている、というのもオモシロイ話。「Business Insider」はEhrlich氏の言葉をなぞらえ、“Tesla of eco-village(エコビレッジ界のテスラ)”とこんな具合に形容します。
およそ50エーカーの土地に100戸を建設予定のコミューンは、全戸にサンルームが設置され、温度センサーやモニターで管理。また効率よく農作物が収穫できるよう、データはすべてクラウド上で一元管理し、最適な情報を居住者に提供する仕組みなんだとか。
じつは、こうしたデータ分析こそが、テスラモーターズの自動運転システムの構築にも活かされた戦略。エコビレッジ版テスラ、こう形容されるゆえんはここにあるようですよ。
伝統的な農法やライフスタイルを現代風にアレンジし、自然と寄り添いながら暮らす。ここにテクノロジーの力であらゆる生活システムを統合させたのが、この次世代型エコビレッジ。
なかには、単にテクノロジーで合理化しただけと揶揄する見方があるのも事実。それでも、インフラに依存しないエココンシャスな人、緑豊かな環境で思いのままに暮らしたい人、自然との共生にこちらを選択する人々も増えてきているようですよ。
なぜって、すでにこの開発業社、同体系のエコビレッジをスウェーデンの地方都市(ルンド)にも建設予定。さらにはデンマーク、ノルウェー、ベルギー、ドイツにも予定地の目星を付けているというんだから。