AIは「より多くの乳がん」を検出できる:米放射線学会の調査

人工知能(AI)の進化は、医療分野においても顕著であり、特に乳がん検診におけるAI活用が注目されている。

最近の研究では、AIを活用したマンモグラフィー検査が、従来の方法に比べて乳がん検出率を21%向上させることが示された。この研究は、北米放射線学会(RSNA)の年次会議で発表され、AIが放射線科医の「第二の目」として機能する可能性を示唆している。

調査結果が示すAIの検査精度

この研究では、10の臨床施設で自己負担によりAI強化型マンモグラフィー検査を選択した女性を対象に、AIの効果を検証。

検査は、まず乳房専門の放射線科医が画像を評価し、その後AIソフトウェアが再評価するという二重のプロセスで行われた。もし両者の評価が一致しない場合は、第二の放射線科医が最終評価を行う仕組みである。

この方法により、AIを活用した検査を受けた女性は、受けていない女性に比べて乳がん検出率が約43%高いという結果が得られた。この差の一部は、高リスクの女性が積極的にこのプログラムを選択したことによるが、それを差し引いても、AIの導入により21%の検出率向上が確認できるという。

またAIの導入は、再検査による陽性予測値(実際にがんである確率)も15%向上した。これは、AIが再検査の精度を高め、不要な検査を減らす可能性を示している。

研究者たちは、自己選択によるバイアスを排除するため、今後はランダム化比較試験を通じてさらなる検証を行う予定とのこと。

精度向上は、医師の負担軽減と見落とし防止に。
一方で「費用負担の増加」が課題に

このAIプログラムは、医師による画像診断を補助し、見落としの可能性を低減させる「セカンドオピニオン」としての役割を担っている。

DeepHealth社のチーフプロダクトオフィサーであるBryan Haslam氏は、「AIを用いたレビュープログラムは、疑わしい所見がある女性に対して専門家レベルのケアを保証する新しいワークフローを提供する」と述べている。

AIによるサポートは、医師の負担軽減だけでなく、診断精度の向上にも貢献しているのだ。

一方で課題とされるのが、医療負担の増加だ。

AIを活用した検診は多くの場合、追加費用が発生するが、現時点では保険適用外であり、利用者の負担が大きくなる。

一部のクリニックでは無料で提供されているが、多くの場合、AIを活用した検査は従来のマンモグラフィーに比べて40〜100ドルの追加費用がかかるという。

この点が普及の大きな障壁となっており、AI技術の普及とともに、保険適用の拡大や費用負担の軽減が求められているのが現状だ。

AI検診がもたらす未来の可能性

AIを活用したマンモグラフィー検査は、特に乳腺密度が高い女性や、医療資源が限られた地域での診断精度向上に寄与する可能性がある。

日本においても、Googleと公益財団法人がん研究会有明病院が共同で、AIを活用した乳がん検診の研究を進めている。この研究では、AIモデルを「セカンドリーダー」として活用し、乳がん検出の精度を7.6%向上させる成果が得られている。さらに、医師間の読影の一貫性も向上し、検診プロセスの効率化にも寄与している。

AI技術の進展は、乳がんの早期発見と個別化治療に新たな可能性をもたらしている。

特に、従来のマンモグラムの限界を補完し、見逃しリスクを低減する点でその有用性が際立つ。しかし、AIの効果は学習データの多様性に依存するため、年齢、乳房のタイプ、人種など、さまざまな要因を考慮したデータセットでの訓練が必要である。

新たに積もる保険適用の課題や費用負担の問題を解決することで、より多くの女性がこの先進的な検査の恩恵を受けられるようになることが期待される。

Top image: © mphillips007/iStock
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