1950年以降、音楽は「シンプル」な構造に変化していることが判明
お気に入りの音楽を聴いている時、あなたはメロディーに集中しているだろうか? それとも、心地よいサウンドやリズムに身を委ねているだろうか?
最新の研究によると、1950年代以降、ポピュラー音楽は複雑なメロディーから、シンプルで耳馴染みの良いサウンドへと変化しているという。
音楽は、よりシンプルな構造へ
「The Standard」によると、ロンドン大学クイーンメアリー校の博士課程に在籍するMadeline Hamilton氏は、1950年から2022年までのBillboardチャートのトップ5にランクインした360年間分のシングル曲、計1,131曲のメロディーを分析。
その結果、楽曲のリズムと音程の複雑さはこの70年間で低下していることが判明したのだ。
具体的には、1953年に人気度4位を記録したEddie Fisherの『Walking Behind You』は、楽曲のキーに含まれていない音も多用するなど、複雑なメロディー構成を持つ。
いっぽう、2009年に人気度2位を獲得したLady Gagaの『Poker Face』は、そのほとんどがBナチュラルという単音を繰り返す、非常にシンプルな構造となっている。
情報過多な社会と音楽の進化
近年「Spotify」や「Apple Music」といった音楽ストリーミングサービスの普及により、私たちは日々膨大な量の音楽にアクセスできるようになった。しかし、そのいっぽうで、このような「情報過多」な環境が、私たちの音楽の好みを変えつつあるのかもしれない。
1950年代には、音楽制作は物理的な楽器と機材に限定され、音色のバリエーションも限られていた。しかし、現代のデジタル技術では、あらゆる音色をソフトウェアで作り出すことが可能になったのだ。
現代の音楽リスナーは、複雑なメロディーよりも、洗練されたサウンドや耳に残るリズムを求める傾向にあるのかもしれない。
そして、作曲家たちもまた、メロディーの複雑さよりも音質やサウンドテクスチャといった要素で個性を表現するようになったと考えられる。
音楽は「時代を映す鏡」
音楽は、時代と共に変化し続けてきた。現代のポピュラー音楽に見られるシンプル化は、情報過多な社会において、人々が音楽に求めるものが変化していることを示しているのかもしれない。
かつて心を揺さぶった複雑なメロディーは、現代ではノイズとして感じられることもあるだろう。
音楽は時代を映す鏡なのかもしれない。