南青山で「アートを飲む」新体験。小沢剛らがカクテルを考案する『AWT BAR』
東京の街全体が現代アートの舞台となる祭典、『アートウィーク東京(AWT)』が、2025年11月5日から9日までの5日間にわたり開催される。
都内の美術館やギャラリーを結び、多彩なプログラムを展開するこのイベントの中でも特に、五感を刺激する斬新な企画として注目したいのが、期間限定でオープンするポップアップバー『AWT BAR』だ。
アーティストの世界観を味わう一杯
南青山に姿を現す『AWT BAR』の最大の魅力は、第一線で活躍するアーティスト自身が考案したコラボレーションカクテルを味わえることにある。
2025年は、小沢剛氏、Chim↑Pom from Smappa!Group、やなぎみわ氏の3組が参加。それぞれの作品世界や展覧会のテーマと深く結びついた、ユニークな一杯を提供する。
小沢剛氏のカクテル『汎大陸(パンゲア)』は、かつて一つだったとされるパンゲア大陸に着想を得た6層のドリンク。

Chim↑Pom from Smappa!Groupは、宇宙デブリをテーマにした『ゴールドエクスペリエンス』を考案。
野菜くず由来のスープとグラッパに、自身の彫刻作品の破片と雑草を入れて楽しむという、既成概念を揺さぶるホットカクテルだ。

やなぎみわ氏は、代表作《エレベーターガール》を思わせるハイヒール型のゼリーを浮かべた『elevator girls』で、作品の艶やかな世界観を表現する。

そして、この空間体験を一層豊かなものにするのが、ミシュラン三つ星レストラン「レフェルヴェソンス」のエグゼクティブシェフ、生江史伸氏が手掛けるフード。
国産小麦と自家酵母を用いたパンで知られるbricolage bread & co.のパンを使ったフィンガーフードを通じて、食べるという行為の奥行きを感じさせる。さらに、建築家の松沢一応氏が設計する「ゆがみ」を生じさせた空間が、来場者の知覚に働きかける。


アート鑑賞の新たな潮流
展覧会と連動したコラボレーションメニューは、アートの楽しみ方を拡張する試みとして近年、様々な美術館やイベントで取り入れられている。
2024年に国立新美術館で開催された「CLAMP展」では、レストランが作品をモチーフにしたデザートやドリンクを提供した。
また、2025年春に福岡市美術館で開催された「テレンス・コンラン展」では、監修者ゆかりのレストランシェフが考案したコラボメニューが登場している。
これらの事例は、作品の鑑賞という視覚的な体験を、味覚や嗅覚へと広げることで、より深く作品世界に没入させる効果を持つ。
AWT BARの取り組みは、この潮流の最先端に位置づけられるだろう。
アーティスト自身がコンセプトから考案に関わることで、カクテルが作品のスピンオフ、あるいは鑑賞体験を補完する新たなメディアとして機能する。
これは、アートファンはもちろん、食に関心の高い層をもアートの世界へと誘う、巧みな架け橋といえるかもしれない。
東京のアートシーンを巡る5日間
『アートウィーク東京』の期間中は、参加する美術館やギャラリーを結ぶ無料のシャトルバス「AWT BUS」が運行され、都内に点在するアートスポットを気軽に巡ることが可能だ。
バーで感性を刺激し、展覧会で思考を深め、トークで知見を広げる。この秋、東京の街が提供する多層的なアート体験に身を委ねてみてはいかがだろうか。

「AWT BAR」開催概要
会場:港区南⻘⼭5-4-30 emergence aoyama complex
会期:11⽉5⽇(水)〜9⽇(⽇)
営業時間:10:00〜22:30 (ラストオーダー22:00)
アートウィーク東京
名称:アートウィーク東京(欧⽂:Art Week Tokyo、略称:AWT)
会期:2025年11⽉5⽇(水)-11⽉9⽇(⽇) 10:00-18:00
会場:都内の参加美術館・ギャラリー、AWT FOCUS、AWT BARほか各プログラム会場
主催:⼀般社団法⼈コンテンポラリーアートプラットフォーム
提携:アートバーゼル(Art Basel)
特別協⼒:⽂化庁
アートウィーク東京モビールプロジェクト
名称:アートウィーク東京モビールプロジェクト
会期:2025年11⽉7⽇(金)-11⽉9⽇(⽇) 10:00-18:00
主催:東京都/アートウィーク東京モビールプロジェクト実⾏委員会
料金
- AWT BUSの乗⾞無料。
- 参加ギャラリーの⼊場無料。参加美術館ではAWT会期中に限り所定の展覧会にてAWT特別割引適⽤。
- AWT FOCUSの⼊場⼀般有料(⾦額未定)、学⽣・⼦ども無料。






