TikTokでAI生成のカントリーミュージック官能小説が流行、その奇妙な実態とは

ここ数週間、TikTokのフィードはカントリーミュージックと過激な歌詞を組み合わせたコンテンツで溢れているという。

『Pitchfork』に掲載されたコラムが、この奇妙なトレンドの背景を伝えている。

AIが歌うカントリー風の官能小説

コラムによると、現在TikTokで流行しているのは、AIアバターが官能的な創作話をカントリーミュージックに乗せて歌うというもの。

その内容は、「ビールを飲みながらトウモロコシの穂軸で自慰行為をする女性」や、「パートナーの上で誤っておならをしないよう神に祈る歌手」など、露骨でユーモラスなものが多いようだ。

こうしたAIによる投稿は、少なくとも昨年から存在していたが、ここ1ヶ月で数千万人の視聴者に届くほど主流になったという。

この流行は、年配の家族にこれらの曲を聴かせ、その反応を楽しむという、ユーモラスなオンライン上のトレンドも生み出している。

見分けがつかないほど巧妙化するAI生成音楽

多くの年配者にとって、これが初めてのAI生成音楽体験となる可能性がある。

しかし、驚くべきことに、その多くが人間によるものではないと見分けられないようだ。歌詞の過激さに気づく前に、シンプルなリフやグルーヴに合わせて楽しそうに体を揺らすという。

SunoやUdioといった音声生成ツールは、人間の不完全さや癖をより効果的に模倣できるようになり、その品質は向上し続けている。

例えば、ある曲では、ボーカルラインの前に息を吸う音が聞こえたり、単語によって声のトーンが変化したりと、本物のボーカリストと見分けがつかないほどの巧妙さだ。

TikTokでの遊びを超えた動き

一部の人々にとっては、これはTikTok上での単なる遊び以上のものとなっているようだ。

これらのテーマを制作する主要なクリエイターの一人であるBeats By AIは、Spotifyで月間60万人以上のリスナーを獲得しているという。

「AI Dirty Songs」や「Unhinged AI Country Music」といったユーザー作成のプレイリストも多数存在する。

この現象はカントリーミュージックに限らず、あらゆるジャンルで発生している。「I Glued My Balls to My Butthouse Again(また睾丸を尻の穴に接着してしまった)」と題された曲は、その歌詞を除けば60年代のソウルソングのように聞こえるという。

AI音楽の未来

『Pitchfork』のコラムは、これが音楽の未来を予見させるものだと指摘する。

AIは、奇抜なユーモアとアルゴリズムに最適化された挑発的な言葉を使い、あらゆるジャンルの鏡像のような音楽を作り出す。

そして、人々がAI音楽を人間が作ったものと同様に評価するよう、密かに訓練していくのかもしれない。

AIが得意とするのは、従来の芸術であろうとしない、使い捨ての刺激的なコンテンツを作り出すことだ。

コメディ目的で奇妙なものを作る段階にとどまれば良いが、AIと人間の音楽は、やがて単一の曖-昧な半現実へと融合していく可能性があると、コラムは締めくくっている。

Top image: © iStock.com / Devrimb
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