中国で銭湯が高級リゾート化!?Z世代が集う「マイクロバケーション」の実態
かつては汗を流すための実用的な場所だった銭湯が、中国で大きくその姿を変えているらしい。
シーフードが並ぶビュッフェ、シルクのパジャマ、そしてメンバーズクラブのような社交場。
そんな高級レジャー施設へと進化した銭湯に、今、Z世代が押し寄せているという。
Z世代が牽引する「ソーシャルスパ」市場
このトレンドが注目を集めたきっかけは、2024年6月にTikTokクリエイターのXixi Liu氏が投稿した一本の動画だったようだ。
小売テック企業Meituanのデータを引用した業界レポートによると、昨年オンラインで銭湯の利用を予約した人は4,000万人以上に上り、その消費額は推定150億元(約20億ドル)に達するとのこと。
この成長を牽引しているのが、まさにZ世代の大学生や若手社会人。
彼らは銭湯での一日を、日々のプレッシャーから逃れるための「マイクロバケーション」と捉えているらしい。
手頃な贅沢から都市型リゾートまで
人気の背景には、その手頃さもあるようだ。
伝統的な銭湯であれば、入場料はわずか29元(約4ドル)から。
一方で、Shuiguo(水裹汤泉)やTangland(汤连得)といったデザイン主導のチェーンは、約300〜400元(約45〜60ドル)で、日本や北欧のスパを思わせる洗練された空間と終日のソーシャルな体験を提供する。
さらにその上には、Qushui Lanting(曲水兰亭)のようなプレステージ層が存在。
24時間の滞在で2,000元(約270ドル)に達するパッケージもあり、そこではキャビアのビュッフェや、Dior、Valmontといった高級ブランドの製品が試用できるという。
高圧社会のサードスペースとブランドの実験場
銭湯がZ世代を惹きつけるのは、コストパフォーマンスの良さだけではない。
高圧的な経済状況下で、かつてジムやコワーキングスペースが約束したような、ウェルネスと社会的地位、そしてコミュニティが交差する「サードスペース」としての役割を担っていると分析されている。
また、この場所はブランドにとって、リラックスした状態のZ世代にリーチするための「ラグジュアリー・ラボラトリー(高級な実験室)」にもなっているようだ。
DysonのドライヤーやDiorのメイクアップ製品を試用する体験は、ごく自然な形でブランドとの出会いを生み出す。
マッキンゼーの「2025年ウェルネスの未来」レポートも、ウェルネスが若者にとって贅沢品ではなく必需品になったと指摘しており、この巨大市場へのアプローチ方法が問われているとのこと。






