2027年まで“現職キープ”が主流に?――米調査で75%が「ジョブ・ハギング」継続と回答

米求人プラットフォーム「Monster」の最新調査において、従業員の75%が2027年まで現職にとどまると回答したことを示しました。

「Forbes」で紹介された内容を元に、冷え込む労働市場における行動変容を取り上げらてみたいと思います。

“雇用なき成長”は誰得なのか?

労働市場が冷え込むなか、「ジョブ・ハギング」(現職にしがみつくこと)が勢いを増し、かつての「ジョブ・ホッピング」(頻繁な転職)に取って代わってきているようです。

給与の大きな上昇が見込めなくなり、現職にとどまることは、野心や変化よりも快適さ、給与、安定性を優先する傾向を反映しています。ある調査によると、75%の従業員が2027年まで現職にとどまる意向であり、そのうち約半数は経済的不安から現状維持を選んでいます。これは、雇用の安定と経済的不確実性が、キャリアの満足度や成長よりも優先されていることを示唆しているのではないでしょうか。

この傾向は、単なる現状維持ではなく、労働者が経済的な不安定さから慎重になっていることを示しています。多くの労働者は、次に就職する組織でダウンサイジングされることを恐れ、現在の仕事を評価する際に、より高い基準を設けています。そのため、転職市場は冷え込んでいますが、機会が完全に閉ざされたわけではありません。労働者は「サイドスタッキング」として、複数の副業を掛け持ちして収入源を増やし、生活費を賄っているようです。

「労働者はこれまで以上に現状にしがみついていますが、それは現状に満足しているからではなく、慎重になっているから」とは、「Monster’s」のキャリアエキスパートであるヴィッキー・サレミ氏の弁。仕事のセキュリティと安定性が、感情的なセーフティネットになっており、新たな忠誠心は、満足度というよりも生存に基づいていると分析します。

しかし、満足のいく仕事でなくても、現在の職を離れることをためらっている場合でも、サレミ氏は現在の職を続けながら、新しい機会を積極的に探すことを奨励しています。もしあなたが「ジョブ・ハギング」をしているのであれば、新しい役割や企業を慎重に評価する一方で、現在の職務で新しいスキルを習得することをお勧めします。

「SalaryGuide」の共同設立者であるドミトリー・アニキン氏は、キャリアの成長が必ずしも雇用主を変更したり、絶えず飛躍したりすることを意味するわけではないと同意。彼は、恐怖から現職にとどまっている「ジョブ・ハガー」が、そのエネルギーを成長に転換できると信じており、新しいスキルの開発、自信の構築、そして機会への準備などを通して、現在の職務内で専門知識と価値を高めることができると考えています。

「ジョブ・ハギング」の感情的なトレードオフ

「現実として、『ジョブ・ハギング』は珍しいことではありません。Monster'sのデータによると、労働者の85%がキャリアのある時点で『ジョブ・ハギング』を認めています」とサレミ氏は指摘。

同社の調査は、「ジョブ・ハギング」が単なる労働市場の安定性だけでなく、リスク回避への文化的なシフトを示しており、快適さが野心と直接競合するようになっていることを強調しています。

現職にとどまることは、労働者にとって快適さと制約の両方をもたらします。「Fortune」誌が指摘するように、「失業なき成長」(雇用の安定と経済的不確実性)の中で、モンスターの調査によると、従業員の27%が現在の役割に不満を感じ、「行き詰まっている」と感じている一方、25%はセキュリティと価値を感じていると回答しています。労働者は、キャリアの成長への影響についても同様に意見が分かれており、47%は「ほとんど影響がない」と回答し、27%は「制限的である」と見なし、26%は「専門知識を構築する」と信じています。

従業員の大多数(94%)は、「ジョブ・ハギング」に伴うリスクを認識しており、より高い給与(26%)、変化のないことによる燃え尽き症候群(25%)、キャリアアップの制限(25%)が上位のリスク要因として挙げられています。しかし、より高い給与や福利厚生(28%)、より良いワークライフバランス(18%)、リモートワークの選択肢(14%)があれば、「ジョブ・ハギング」から解放されると回答する労働者も多数います。

職場では、「ジョブ・ハギング」は中立的(44%)、肯定的(49%)、否定的(7%)と見られており、批判されるよりも受け入れられていることが示唆されています。また、労働者は雇用主が忠誠心とコミットメント(26%)、組織知識(22%)、そして特に離職率の低下(30%)を理由に「ジョブ・ハガー」を静かに評価していると考えている様子。

アニキン氏は、疑念はキャリアの決定において自然な部分であると認めています。しかし、重要なのは、「ジョブ・ハギング」の根底にある疑念を認識し、それが自分の選択を左右しないようにすること。

「従業員は準備をすることで疑念を減らすことができます」と彼はアドバイスしています。自分のスキルに自信があり、方向性が明確であれば、変化への恐れは薄れ、とどまるか移動するかという決断は、より力強いものになるのでしょう。

Top Image:AIによる生成
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