幸福感は「自分のため」より「誰かのため」で上がるらしい。【 コーネル大学】

現代社会は、経済不安や社会的混乱の影響で幸福感の低下が指摘されています。英紙『The Independent』が紹介したコーネル大学の研究「The Contribution Project」によれば、他者への「貢献」に資金を投じる行為は、8週間後に目的意識や所属感などの心理指標を押し上げる傾向が示されました。

背景として、2025年1月のGallupの意識調査では「個人生活に非常に満足」する米国人が24年ぶりの低水準(44%)に落ち込んでいます。混沌と不安の時代に、幸福感を回復させる具体的手がかりとして「貢献」の力に注目が集まっています。

貢献がもたらす幸福

研究の背景と目的

コーネル大学の心理学者アンソニー・バロウ氏と彼の研究チームは、6年間にわたる大規模なプロジェクト「The Contribution Project」を通じて、「もし地域社会に貢献するために400ドルを与えられたら、あなたは何をしますか?」という問いを1,000人以上の高校生および大学生に投げかけました。

この研究は、現代人が抱える幸福感の低下という課題に対し、具体的な行動を通じて解決策を見出すことを目的としています。

実験方法と結果

参加者は、提供された400ドルを自己成長や地域社会への貢献に活用する機会を得ました。実験開始時点では、資金提供を受けたグループと受けなかったグループの間で、幸福感、目的意識、所属意識、必要とされている感覚、感情のバランスといった心理的な指標に大きな差はありませんでした。

しかし、8週間後に再度測定したところ、資金提供を受けたグループは、受けなかったグループと比較して、これらの心理的指標が有意に向上していることが明らかになったそうです。

具体的な貢献活動の例

参加者たちは、地域住民のために何百回も洗濯を代行したり、母校に書籍を寄贈したり、キャンパスに木を植えたり、メンタルヘルスリソースのウェブサイトを作成したりと、多様な方法で貢献活動を行いました。これらの活動は、参加者自身の幸福感や目的意識を高めるだけでなく、地域社会にも具体的な価値を提供したようです。

他者への貢献がもたらす自己肯定感の向上

この研究結果は、単に他者から与えられることよりも、自らの意思で他者に貢献することによって、人はより深い満足感と幸福感を得られることを示唆しています。自分が他者にとって必要とされ、役立っているという感覚は、自己肯定感を高め、人生の目的意識を強化します。これは、特に不安や混沌とした状況下において、精神的な安定をもたらす強力な「幸福のハック」となり得るということのようです。

世代を超えた普遍的な欲求としての「貢献」

研究に参加した学生の一人、エリック・コウツ氏は、「私の世代の多くの人は私と同じように、本質的に愛したいし、愛されたいと思っています。そして、それがしばしば表に出てくるのだと思います」と強調。この言葉は、他者への貢献を通じて「愛したい」という欲求を満たすことが、世代を超えた普遍的な人間の欲求であり、幸福感の源泉となりうることを示唆しています。

現代社会において、この「貢献」の精神を育むことが、個人の幸福だけでなく、より良い社会を築く上でも不可欠と言えるでしょう。

貢献を促進する社会システムの構築

コーネル大学の研究はまだ査読されていませんが、その原則は多くの人々の生活に変化をもたらす可能性を秘めています。今後、このような「貢献」を奨励し、支援する社会システムや教育プログラムがさらに発展していくことが期待されます。

個人が自身の貢献したいことを考え、それを実行できる機会を提供することで、社会全体の幸福度レジリエンス(回復力)を高めることができるでしょう。

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