「審査制」が安心を生む。食でつながる新しい居場所のかたち
株式会社AMOVEが手がける審査制グルメコミュニティ「IRO+(イロタス)」が、開始3ヶ月で会員800名を突破。その急成長の背景を探ります。
都市の孤独と「選べる居場所」
内閣府が令和6年に実施した全国調査によると、約4割の人が「孤独感がある」と回答しています。特に20〜50代でその傾向が顕著だといいます。社会人になってから職場以外のつながりが増えにくい、休日にぽっかり予定が空いてしまう——そんな感覚に覚えのある方は少なくないのではないでしょうか。
かつてのように職場や地域が自動的にコミュニティの役割を果たしてくれた時代は、静かに終わりを迎えつつあります。働き方も家族のかたちも多様化した今、「どこかに所属する」のではなく「自分で選んで出入りできる居場所」を求める人が増えていることがうかがえます。SNSで気軽につながれる時代ではあるものの、匿名性ゆえの不安や評価される前提での発信に疲れてしまう、いわゆる「SNS疲れ」も広がっています。そうした背景のなかで、心理的安全性が担保されたクローズドなコミュニティに価値が集まり始めているのは、自然な流れなのかもしれません。
IRO+は、まさにこの文脈に位置するサービスです。同社の発表によると、対象は20〜30代のグルメ好き男女で、東京都内を中心に活動。「食で日常に彩りをプラスする」をコンセプトに掲げ、月間50回以上のイベントを開催し、累計動員数は5,000名を超えたとのこと。2026年1月時点では会員数600名超・月間イベント20〜30回だったことを考えると、わずか2ヶ月半で急速にスケールしていることがわかります。
「審査」は壁ではなく安心の設計
「審査制」という言葉には、どうしても「選ばれた人だけが入れる」という排他的なイメージがつきまといます。しかしIRO+が審査制を採用する理由は、初めての参加者でも安心して一歩を踏み出せる環境をつくるためだと同社は説明しています。審査基準には職業や社会性、年齢、グルメへの関心度、マナーなどが含まれており、目的はあくまで「場の文化」を守ること。
実際、参加者からは「上京後に気軽に会える友達ができた」「女性一人でも安心して参加できた」「行きたかったお店に一緒に行ける人が見つかった」といった声が寄せられているそうです。こうした声を聞くと、審査というフィルターが「壁」ではなく「安心のインフラ」として機能していることが伝わってきます。
興味深いのは、同コミュニティが「良い人が集まる」だけでなく「良いつながりが生まれる」状態を再現性をもってつくることを重視している点です。運営側が会話のきっかけづくりを行い、グループ替えや交流導線を工夫することで、参加者の固定化を防いでいるとのこと。コミュニティ運営において「場の設計」がいかに重要かを示す好例ではないでしょうか。
食は「つながり」の共通言語になる

内閣府の令和7年調査では、「共食」の頻度と孤独感の間に相関があることが新たに確認されました。誰かと一緒にごはんを食べるという行為が、孤独感の軽減に寄与する可能性があるわけです。海外でもZ世代を中心に、レストランを単なる食事の場ではなく「社会的つながりの場」として再定義する動きが広がっています。食という体験を共有することが、初対面同士の距離を自然に縮めてくれる——そんな感覚は、多くの方が直感的に理解できるものでしょう。
IRO+のイベントラインナップを見ると、マグロ解体ショー付きの鮨食べ放題、下北沢の人気バーガーショップ「BURGERS TOKYO」とのコラボでメンバーがゼロからオリジナルバーガーを考案する企画、東京タワーを一望するスカイラウンジ貸切のジャパニーズワイン会など、「一人では体験しにくいけれど、誰かと一緒なら最高に楽しい」ものばかり。食が単なる消費ではなく、関係性を育む共通言語として機能していることがよくわかります。
「選ぶ」ことで生まれる余白
コミュニティの価値が「所属すること」から「選んで出入りできること」へと変わりつつある今、IRO+の急成長は一つの時代の空気を映し出しているように感じます。毎日通わなくてもいい、義務感もない。でも「今日は誰かと美味しいものを食べたいな」と思ったときに、安心して飛び込める場所がある。そんな余白のある居場所こそ、忙しい都市生活者が本当に求めているものなのかもしれません。






