「推し」が連れて行ってくれる場所

サウナ大好き作家・岩田リョウコさんと、サウナをこよなく愛する女優・清水みさとさん。

ふたりがどのようにサウナを日常に取り入れ、どんなサ活を楽しんでいるのか。気になりますよね? そこで、ふたりのサウナな日々を「交換日記」に綴ってもらいました。

今回は、みさとさんからリョウコさんへ──。

清水みさと

俳優、タレント。サウナ好きが高じて、「サウナイキタイ」ポスターモデルをはじめ、ラジオ「清水みさとの、サウナいこ?」(AuDee/JFN全国21局ネット)のパーソナリティーを務め、TBS「世界ふしぎ発見!」など多方面で活躍中。近著に『サウナのぷりンセス』。

リョウコさんへ

 

“推し”の話、すごくおもしろかったです。

考えてみれば、楽しさはいつも「誰か」や「何か」がプレゼントしてくれていますよね。自家発電のときも、種はどこかでもらったものだし。

わたしもいつも、リョウコさんから楽しさをもらっているので、わたしの「推し」はリョウコさんでもあります!

お互いに推し合えるって、幸せもの!

©清水みさと

わたしもリョウコさんと同じように、熱心に「推し活」をしたことがないと思っていたのですが、過去に一回だけ、ありました。

大学4年生の頃、小林賢太郎さん作・演出・出演の舞台『うるう』を金沢まで観にいった“地方遠征型”の推し活です。

小林賢太郎さんは、お笑いコンビ「ラーメンズ」を結成していました(2020年に解散。このとき初めて「解散」のかなしみを味わう)。

大学生の頃、友人たちとラーメンズにハマりました。コントなのに演劇っぽくて、ド級の非日常なのに、中身はとびきりの日常という世界観。おもしろいのに、あまりのクリエイティブさに、たまげるんです。

このネタを作っていたのが、小林賢太郎さんです。

 

いつか生で観てみたいと思っていたのですが、当時すでにラーメンズは活動休止中。残念に思っていたところ、小林賢太郎さんがソロ公演をやっていることを知りました。

ラーメンズは生で観れないけど、小林賢太郎さんが作る世界を生で観れるチャンス!慌ててネットでチェックすると、金沢公演以外すべて完売。

ちょうど北陸新幹線が開通したころで、金沢まで簡単に行けるからと、すぐさまチケットを購入したのですが、なぜかわたしが選んだ行き方は「青春18きっぷ」でした。

©清水みさと

ネーミングのときめきと、好奇心と、なにより学生にとってこの安さのインパクト。1日乗り放題の切符×5回分ついて当時の価格で1万円ほど。5回も旅できるなんてお得すぎると、片道12時間の途方もなさより、安さに目が眩みました。

 

新宿で始発に乗れば間に合う。ただ、一つでも乗り換えに手こずると絶対に間に合わない……。

とくに熱海駅が鬼門で、乗り換えがダッシュをしないと間に合わないくらい時間がないうえ、座席を確保しないとしばらく立ちっぱなし地獄になる“熱海ダッシュ”があると、ネットにありました。

本当にそんなことあるのかな?と思って熱海に着くと、大きなリュックを背負った大人たち(ほぼ男性)が、本当にものすごい勢いでダッシュするんです。あまりの迫力とおかしな光景は、今も忘れられずにいます。

長旅のため、袋詰めのみかんを家から持参©清水みさと

最初は楽しかったんです。

本を読んだり、車窓を眺めたり、「旅」って感じがして、自分かっこいいなとか多分思ってたんですけど、どんどん飽きてきちゃって、お尻も痛いし、何もしない時間をのんびり過ごせるほどには、まだ大人じゃありませんでした。

©清水みさと

こまめに乗り換えが続き、何もない小さな駅で1時間ほど待ちぼうけしたりと12時間。着くころにはもうくたびれてヘトヘトで、結局わたし、舞台の序盤で寝ちゃったんですよ。はるばる金沢まで観にきたのに。

元も子もなくなるって、何もしないよりも悲しいじゃんと大学生のわたしは思い、それ以来、とっておきの楽しみのためにケチはしないと決めました。

 

ちなみに、4年後、『うるう』が再演され、満を持して観ることができました。再演なんてあるほうが稀です……。

舞台はナマモノで儚く刹那的。一度きりの舞台、どうか大切にしてください……(どの口が言ってるのるやら)。

 

初めての地方遠征で記憶に残ったのは、推しの何かではなく、おじさんたちとぜーぜー息を切らしながら階段を走り、椅子取りゲームをした熱海ダッシュという、とんだ結末。

本当はあちこち旅して帰る予定だったけど、すかさず新幹線に飛び乗り、2時間ちょっとで東京へ帰りました。欲張りすぎるのもまぁまぁ良くないなと思いました。ほどほどが一番いいです。

そして、失敗はだいたいの場合、時が経てばおもしろくなると教えてくれた旅でもありました。

 

リョウコさんの「交換日記」を読むまで意識していなかったけど、推しって本当にすごいです。いつだって目的地になって、新しい場所へと連れ出してくれるから。

目的があるから、そこに行くという選択肢が生まれて、道中にもドラマが生まれて、まわり道も寄り道もさせてくれる。熱海ダッシュもそうそう味わえないし。

わたしたちにとってのサウナ旅も、いうなれば「推し活」のようなものですよね。どうしてもそこに行きたくてしょうがなくさせてくる、サウナという推し。その土地で食べるサウナ飯。

人生を彩っているのは、もしかするとすべて「推し」なんじゃないかとすら思ってきました。

 

ところで、最近の「推し活」という名のサウナ旅は、富山県黒部市にある「湯屋 FUROBBAKKA」です。

©清水みさと

サウナが20個、しかもすべて薪サウナで、水風呂はすべて黒部の名水掛け流しらしいと聞きつけ、飛んで行きました。

©清水みさと

見たことのない数のバレルサウナや、トレーラーサウナがずらり。貸切で男女一緒に入ることができるサウナです。

©清水みさと
©清水みさと
©清水みさと

奥に進むと大きな大浴場があり、ここは男女別で裸で入れます。

©清水みさと

そしてもちろん大浴場にあるサウナも、薪サウナ

大きな露天スペースにサウナが2つ、掛け流し水風呂が3つ。ベーシックな水風呂に、「マリオ」が飛び出てきそうな土管の水風呂が二つあって、そのうち一つは水深160cmです。

規格外でおもしろいだけじゃない、しっかりととのう、どこまでも突き抜けたサウナ施設がここにありました。

20個のサウナが全部薪ストーブだなんて、やっぱり作ろうと思っても作れないですよね。いやむしろ、作ろうという発想にもならないかも。いやぁ、すごい。

 

ちなみに、富山にサウナ旅をするならと、新潟の「SHIIYA VILLAGE」にもより道をしました。より道っていう距離感ではないのですが、好きなところにはできる限り足を運びたくなっちゃいますよね。推しなので。

 

意外とわたしも、推し活しているのかもしれません。「推しは推せるときに推せ」という名言を、人間の推しだけじゃなく、モノや場所にも使わせていただこうと思います!

それにしても、推しって、ちょっと軽さがあっていいですね。今後、推しってことばをやたらめったら使いそうで怖いです。いいことば、教えてくれてありがとうございます(笑)

湯屋 FUROBBAKKA

【住所】富山県黒部市堀切951-1
【公式ページ】https://furobakka.com/

↓「サウナ交換日記 〜vol.43」はこちらから↓

Top image: © 清水みさと
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。