日本酒を「味」ではなく、「風土」で評価する新アワード

一般社団法人ラグジュアリージャパン観光推進機構が、「Luxury Japan Award 2027」に新部門「日本酒テロワール大賞」を創設。

審査委員長は世界最優秀ソムリエの田崎真也氏。注目すべきは、このアワードが日本酒の「味の優劣」を競う場ではないということです。

Luxury Japan Award 2027のロゴビジュアル。深いネイビーの背景にゴールドの文字でアワード名が記されている
© 一般社団法人ラグジュアリージャパン観光推進機構

テロワールとは、ワインの世界で使われてきた概念で、ブドウが育つ土地の気候、土壌、水、そしてそこに根づく文化までを含めた「風土の総体」を指す言葉。フランスワインを語るとき、品種やヴィンテージと同じくらい、あるいはそれ以上に重視される考え方でもあります。

では、日本酒はどうだったか。全国新酒鑑評会やIWCのSAKE部門など、国内外に評価の場は存在します。けれどそこで問われるのは、あくまで「酒そのものの品質」が中心でした。どんな水で仕込まれ、どんな気候の土地で米が育ち、その地域にどんな食文化が息づいているのか——そうした背景が体系的に評価される仕組みは、実はほとんどなかったんです。

今回の「日本酒テロワール大賞」は、まさにその空白を埋めようとする試みです。募集部門は「純米大吟醸部門」と「純米酒部門」の2つ。応募条件には「地域の風土や自然環境、原料特性など、テロワールの個性を表現していること」が明記されています。味覚のスコアだけでは測れない、土地との結びつきそのものが審査の軸になる

田崎真也がワインの評価眼を持ち込む

この構想に説得力を与えているのが、審査委員長に田崎真也氏を据えたという判断でしょう。田崎氏はワインの国際的権威であると同時に、日本酒や食文化全般にも深い知見を持つ人物です。ワインで培われたテロワールの評価眼を、日本酒という別の醸造文化に接続できる——おそらく、この役割を担える人は世界でもそう多くありません。

さらに、審査体制には海外出身の日本酒専門家も招聘される予定とのこと。国内の専門家だけで閉じず、国際的な視点を組み込むことで、「日本酒テロワール」という新しいカテゴリーの正統性を外側からも担保しようとしている。ここには、日本酒を「日本国内の嗜好品」から「世界の旅行者が訪れる理由になる地域資産」へと再定義したいという明確な意図が見えます。

Luxury Japan Awardは過去4回にわたり、ホテル・旅館やレストランといった「体験」を表彰してきました。その延長線上に日本酒が加わったということは、酒そのものではなく「その酒が生まれた土地を訪れる体験」に価値を見出しているということです。

一杯の酒が「次の旅先」を決める日

正直なところ、「日本酒にテロワール」という言葉の組み合わせを最初に見たとき、少し意表を突かれました。考えてみれば、日本酒ほど土地に根ざした酒もないのに、なぜこれまで「風土で評価する」という発想が制度化されてこなかったのか。その問いのほうが、むしろ不思議に思えてきます。

ワインを選ぶとき、私たちはすでに産地で選んでいます。ブルゴーニュかボルドーか、という具合に。同じことが日本酒でも起きたら、どうなるでしょう。「新潟の淡麗」「秋田の芳醇」——漠然と知っていたイメージが、テロワールという枠組みを得ることで、次の週末の旅先を決める手がかりに変わるかもしれません。

一杯の酒の向こうに、水源の山があり、田んぼの風があり、何百年と続く蔵の空気がある。そう思って飲む酒は、きっと味まで違って感じられる気がしてなりません。

『Luxury Japan Award 2027「日本酒テロワール大賞」』

【主催】一般社団法人ラグジュアリージャパン観光推進機構(Luxury Japan®)
【募集部門】純米大吟醸部門/純米酒部門
【エントリー期間】2026年7月14日(火)〜2026年9月15日(火)
【審査委員長】田崎真也氏(世界最優秀ソムリエコンクール優勝者)
【協賛】クレディセゾン、ユーソナー、OfficeREI
【公式サイト】https://ljtm.org/award/

Top image: © iStock.com / gtlv
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