仕事モードを、椅子で切り替える。コクヨ×ソニー発「整うチェア」

コクヨとソニーフィナンシャルグループ(SFGI)が共同で開発した、ちょっと不思議なプロトタイプが発表されました。
その名も「(仮称)コンディショニングチェア」。オフィスチェアなのに、目的は「座ること」ではなく「自分の状態を切り替えること」なのだそうです。

ソニーの振動技術を背もたれに仕込んだ
「音を身体で聴く」チェアの仕組み

コンディショニングチェアのプロトタイプを上方から見た図。卵型の白いシェル内部にダークグレーのクッションシートがあり、背もたれと座面に振動デバイス(アクチュエーター)が埋め込まれている
© コクヨ株式会社

このチェアの核になっているのは、ソニーが長年研究してきた「ハプティクス技術」。聞き慣れない言葉ですが、要は「触覚を通じて情報を伝える技術」のことです。

ゲームのコントローラーが振動で衝撃を伝えてくれる、あの仕組みの延長線上にある技術と考えるとイメージしやすいかもしれません。

チェアの内側には「アクチュエーター」と呼ばれる振動デバイスと専用スピーカーが組み込まれていて、音楽を耳だけでなく身体全体の振動として感じられる設計になっています。

集中したいとき、少しリラックスしたいとき。自分が必要とする「状態」を選んで、数分間座るだけで心身のモードを切り替える——そんな体験を目指しているとのこと。

アスリートの集中法が
午後の会議前に使えるようになる

面白いのは、この共創の片方がSFGIだという点です。

同社は「NOUS ARE™(ノウスアレ)」というパフォーマンス・コンディショニングサービスの研究開発を進めています。
もともとはアスリートのメンタルコンディショニングに近い領域の知見が、金融グループの手を経て、オフィス家具に落とし込まれようとしている。

この流れが示唆するのは、「集中力やリラックスの切り替えは、才能やトレーニングの問題」という前提が揺らぎ始めているということではないでしょうか。

プロのアスリートが試合前にゾーンに入るために行うルーティンを、私たちが午後の会議前に椅子で数分間体験する。そんな未来が、プロトタイプという形で動き出しています。

場所ではなく、椅子ひとつで状態を変える

高層オフィスのラウンジスペースに複数台のコンディショニングチェアが設置されたイメージCG。窓際のカーペットエリアに白いシェルのチェアが並び、カウンター席やソファ席で働く人々の姿も見える
© コクヨ株式会社

コクヨはこれまでも、集中ブース「WORKPOD」シリーズなどを通じて、オフィス空間そのものを「働く人の状態」から設計し直す提案を続けてきました。

今回のチェアは、その思想をさらに一歩進めたものと言えます。空間ではなく、椅子ひとつで状態を変えられるなら、場所の制約はぐっと小さくなります。

2026年8月からプロトタイプの検証が始まるとのことで、製品化の時期や価格はまだ未定。けれど注目したいのは、スペックよりもこの椅子が問いかけている前提の転換です。

「今日の自分のコンディション、何に座るかで変わるとしたら?」

そう聞かれたとき、笑い飛ばせなくなる日が、案外すぐそこまで来ているのかもしれません。

Top image: © コクヨ株式会社
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。