巨大紙ヒコーキから未来の発電へ。トヨタが挑む「空の技術」の可能性
子どものころ、夢中で白い紙を折り、どこまで遠くへ飛ぶか競い合った経験があるはずです。そんな素朴な遊びに、日本を代表する自動車メーカーの本気の頭脳が挑んだらどうなるのでしょうか。
社内で「凧あげ」と呼ばれる
先端チームの正体

トヨタ自動車は2026年9月20日の「空の日」に合わせて、公式YouTubeチャンネルにて1本のユニークな挑戦動画を公開しました。
共演相手として招かれたのは、1999年に「あの紙ヒコーキ くもり空わって」を大ヒットさせた元19(ジューク)の岡平健治さんです。自身も紙ヒコーキを趣味にしているという岡平さんが見守るなか、大人たちが知恵を絞った巨大な機体が大空へと放たれます。
名曲を知る世代には懐かしく、知らなくても見入ってしまう挑戦の模様は、ショート動画としてまとめられています。
一見するとお祭り企画に見えますが、機体を手掛けたメンバーの顔ぶれを知ると印象は大きく変わります。製作を担ったのは、トヨタ社内で「凧あげで給料をもらっている」と噂される先端研究開発チーム「マザーシッププロジェクト」の技術者たちです。
彼らの本業は玩具作りではありません。高度1万メートルという遥か上空まで巨大な凧を揚げ、日本の上空を吹く強い偏西風をとらえてクリーンな電気を生み出す研究を進めています。
化石燃料に頼らないエネルギー自給率の向上を目指し、2018年から地道な実証を重ねてきた筋金入りの空力エキスパート集団なのです。
大空の遊びから
日本の防災インフラへ
彼らが培っている空の技術は、発電にとどまらない広がりを持っています。
たとえば海上で凧を揚げ、糸に取り付けたセンサーで大気中の水蒸気を測れば、近年被害が深刻化している線状降水帯の発生を早期に予測できる可能性があります。
さらに、一般的な小型ドローンでは持ち上げられない重い荷物を運ぶ力も備えており、山岳地帯や離島へ物資を届ける次世代の物流インフラとしても期待が寄せられています。
雲を割るように飛ぶ紙ヒコーキの向こうには、日本の暮らしや防災を支えるかもしれない、壮大で確かな技術の芽が息づいています。






