外資系コンサル流!仕事で「圧倒的な価値」を出す7つの秘訣

二千人のビジネスパーソンに「知的生産の技術」を指導してきた経験から、いかにして「知的生産の戦略」を立てるべきかを紹介します。

01.
相手が持っていない知識にしか
価値はない

Business meeting

なんらかの知的生産を行うとき、皆さんはまずどこから手をつけるでしょうか。多くの方は、社内の関連資料を集める、本屋で関連する書籍を購入する、といったところからスタートするでしょう。でも残念ながらそれは間違いです。情報収集はもっと後回しでよいのです。では、何をやるべきなのか?

答えは「知的生産の戦略策定」です。どのような知的生産物を生み出せば、この局面で勝てるのか?という点についての見通しをつけるのが大事なポイントです。

マーケティングにおいて最も重要なのは「差別化」。特に知的生産においては「顧客がすでに持っている知識との差別化」が一番の問題になります。相手が持っていない知的生産物という商品を生産してこそ価値があるのです。

02.
「広さ」と「深さ」で付加価値を生み出す

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知的生産を行うにあたっては、受け手が何をどこまで知っているか理解したうえで、どうやって「新しい付加価値」を生み出すかが大切です。

ここでポイントになってくるのは、「新しさ」には二つの出し方があるという点です。具体的に新しさを出すには「広さで出す」のと「深さで出す」のと二つの方向性があります。

例えば、堅調と思われていた事業において、潜在的に顧客の不満が蓄積しており、いつ競合相手に取引を奪われてもおかしくないということが分析の結果分かったとします。これは相手方がまだ気付いていない、問題意識の「外側」にあることを指摘しているわけで、この指摘は「広さ」で価値を出しているといえます。

一方で例えば、売り上げが低下していて「この事業はそろそろヤバいな」と相手がすでに考えている事業について、今まで分からなかった売り上げ低下の原因を明確化できた場合、これは相手方の問題意識の「内側」にあることを指摘しているため、「深さ」で価値を出した指摘といえます。

知的生産を生み出すために情報収集は不可欠ですが、その情報の種類は「広さ」と「深さ」で大きく変わってくるのです。

03.
要注意!
「言葉が生まれず、手が動かない」
のは悩んでいる証拠

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情報はそれなりに集まっているはずなのに、なかなか答えが見えてこないということがあります。そんなとき、「考えている」のならいいのですが、「悩んでいる」のであればどんなに時間をかけても解決はしません。「考えている」か「悩んでいる」かを判断する二つのポイントがあります。

一つは「手が動かなくなる」と「悩んでいる」といえます。知的生産におけるプロセッシング(集めた情報を分けたり、組み合わせたりして、示唆や洞察を引き出す作業)のほとんどは紙やホワイトボードを利用し、手を介して行われるからです。

二つ目は「言葉が生まれない」という点です。知的生産において「考える」とは集めた情報から、示唆や洞察をメッセージとして生み出すことですから、それが出てこないときは「悩んでいる」状態にあるといえます。

一時間ほど「手が動いていない」「言葉が出てこない」と思うのであれば、別の方策を考えるようにしましょう。「問いの立て方」と「情報の集め方」を見直すのも、よい一手です。

04.
「長く考える」のではなく
「何度も考える」

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情報はそれなりに集まっているはずなのに、なかなか答えが見えてこないという場合のポイントは、長く考えるよりも、短く何度も考える方が突破口を見つけやすいということです。

自然科学や哲学の問題ならまだしも、ビジネス上の問題について、数時間考えても見通しが得られない場合、「考える角度」を誤っている可能性があります。そのような状況に陥ったら、一度退却し、違うアプローチを細切れに、いろいろ試してみるといいでしょう。

ここでポイントになるのが、せいぜい五分程度の思考を、時間と場所を変えて繰り返し行うということです。

知的生産の総量は思考の総量に比例しますが、思考の総量は、「考える時間」の量よりも「考える回数」の量によって決まるのです。

05.
一体誰が「顧客」なのかを
はっきりさせる

Sharing the data she's collected

知的生産において、その知的成果を受け取る相手に着目することは最も重要なことです。マーケティング的な枠組みでいえば、知的生産物を購入してくれる「顧客ターゲットを明確化する」ということです。そんなこと当然じゃないかと思うかもしれませんが、この点を明確にせず作業に入ってしまう人が多いのです。

特に注意してほしいのが、直接の発注者が「真の顧客」であるとは限らないという点です。例えばコンサルティングのプロジェクトにおいて、発注の窓口になるスタッフが最終的な知的成果の受け手であることはめったにありません。顧客ターゲットを曖昧にしたまま、知的生産のプロセスに突入してしまうと「目標設定ができない」のです。目標となる水準が設定できないと、手当たり次第に情報を集めることになり、チームは疲弊し、顧客も満足しないという残念な結末を迎えることとなります。

知的生産の初期段階では、生み出そうとしている知的成果物を届ける相手=顧客をできる限り具体的に思い浮かべた上で、その人が何に付加価値を感じてくれるのかをはっきりさせることが非常に重要だということです。

06.
顧客が求めるクオリティを
明確化する

Offering his honest input

ターゲットとなる知的成果の受け手が「なにを知りたがっているか」を明確化するにはどうすればいいのでしょうか。

例えば、市場規模の将来予測を出したいという場合、粗々でもいいので大きな方向感が分かればいいという場合と、投資の意思決定に使えるような精度の高いものが必要だという場合では、まったく作業アプローチは変わってきます。あるいは、ある企業のビジネスプロセスをベンチマークするという際に、プロセスの大きな大まかな流れが分かればいいという場合と、各プロセスの工程と人員数まで詳細に知りたいという場合とでは、やはりアプローチはまったく変わってきます。

要求されている知的生産物の品質やスペックがはっきりしないと、知的生産のための作業工程が設計できません。そのため知的生産の初期段階において、顧客が求めている知的生産物の品質クオリティを明確化させるようにしましょう。

07.
「○つの問いに答える形で
資料を集めておくこと」
と、具体的に指示を出す

Touchscreen teamwork

情報収集に当たってのポイントは「指示は、『行動』で出すのではなく、『問い』で出す」ということです。

知的生産を行うことになると、時間のプレッシャーがかかっていることもあって、「とにかく関連する情報を集めよう」という指示になりがちです。しかし、たくさん集めたものの結局使ったのはごくごく一部で、非効率だった、というのはよくある話です。

自分が情報収集に走る、あるいは部下を走らせる前にすべきなのは、「問い」を明確化するということ。「○○に関連する資料を、金曜日までになるべくたくさん集めておいて」などという指示を出してはいけません。そうではなく、「○○に関して、この四つの問いについて答えが出せるような資料を集めておいて」という指示を出さなくてはならないのです。このようにイメージの湧きやすい「問い」の形で指示を出すことは、目安を提示することになり、心理的な安心感を増すことにもなります。

外資系コンサルの知的生産術 プロだけが知る「99の心得」
コンテンツ提供元:光文社

山口周/Syu Yamaguchi

電通、ボストン・コンサルティング・グループ、A.T.カーニー等を経て、世界最大級の人事・経営コンサルティング会社であるヘイグループに参画。「人事制度の設計」「リーダーの育成」「組織のデザイン」の3つをテーマに活動している。慶応義塾大学文学部哲学科卒業、同大学院文学研究科前期博士課程修了。 『グーグルに勝つ広告モデル』、『世界で最もイノベーティブな組織の作り方』(ともに光文社新書)など多数の著書をもつ。

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