不安な時代を「自分の意志」で生き抜くための、8つのヒント

ジョン・キム
作家
韓国生まれ。2004年から2013年まで慶應義塾大学特任准教授を務める。オックスフォード大学、ハーバード大学などで客員研究員を歴任。著書に『媚びない人生』(ダイヤモンド社)、『時間に支配されない人生』(幻冬舎)、『断言しよう、人生は変えられるのだ。』(サンマーク出版)など多数。最新刊は『ジョンとばななの幸せって何ですか』。2013年からは、パリ、バルセロナ、フィレンツェ、ウィーンに拠点を移し、執筆活動中心の生活を送っている。元音楽プロデューサー四角大輔氏とのコラボサロン『Life is Art』主宰。「女性自身」に連載を持ちながら、女性のひとり起業を応援するV2F Academyを今年3月よりオープン予定。

70年代、80年代の日本では右肩上がりの経済成長が約束されていた。その時代には、企業の中で与えられたものをこなしていけば、それなりにやっていける社会が成り立っていた。しかし、今はそれだけでは自分の将来は保証されない。

その状況に不安を抱く人も多いだろう。しかし、不安を受け入れ、自己変革の糧にしていかなくてはならない時代なのだ。自著『不安が力になる』より、いまの時代をしなやかに生きるためのヒントを紹介しよう。

01.
自分の考えた「問い」を
他人に答えてもらう

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今では失敗例として語られることの多い「ゆとり教育」だが、私は詰め込み教育から離れ、個の才能を伸ばす方針に転換したことはよかったのではないかと思う。しかし教育のカリキュラムや授業内容を整えるよりも早く、世界は変化していたのだ。

これからの社会に求められているのは、与えられた問題に答えを出せる人材ではない。自分で問題を作り出す人材だ。問題発見や問題設定ができる能力が重要になる。問題を特定し、答えを出すだけではまだ足りない。その問題の意味付け、価値付けをして、重要な問題であることを他人に知らしめる力も必要だ。自分の考えた問題を、人にも考えてもらう説得力が、世の中を変えていく。

02.
主体的・批判的に考えて
自分の言葉で表現する

海外にあり、日本にないものの一つとして、クリティカル・シンキングを学ぶ環境がある。ヨーロッパでは、多様で異質な人々が暮らすという社会背景ゆえに、お互いに対する完全な信頼がないのに、キリスト教や王政などによって一つの価値観が押し付けられてきた歴史がある。その反動が一つの答えに対し、主体的・批判的に考察する思考を育てる行動として現れた。

日本でクリティカル・シンキングの力を育てるにはどうすればいいのか。それには、言語的に表現することが重要だ。頭の中で思考を育てることももちろん必要だが、それを人に伝え、議論して、さらに思考を深めるところまでできて、初めてクリティカル・シンキングの力が育つ。

03.
ナイーブはNG!
交渉力を身につける

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日本人は基本的に対立を避け、「いい子」でいようとしてしまう。議論に慣れていないため、ディベートになる前の段階で自分の意見を抑えてしまうのだ。だから日本は世界から愛されるが、軽く見られてしまうことにもつながる。

私の韓国の友人に、ある設備を海外に輸出する事業を行う人がいる。彼は、国際的な入札で、中国やドイツ、日本と競争になるときに、勝率を中国相手なら3割、ドイツなら5割5分、日本だと8割と見積もるという。それは品質の問題ではない。あらゆる手段を用いて契約へと持ち込む説得力の強さの問題だ。

日本人はナイーブに正々堂々と勝負をしようとする。日本人同士では通用したとしても、それでは海外では競争に負けてしまう。日本の倫理観と、他国の常識や合理性がマッチするとは限らないことを認識すべきである。

04.
集団行動をやめ
成熟した大人になる

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私は、自分と真剣に向き合う時間として、孤独を非常に大事なものと認識している。孤独にマイナスイメージを抱く日本人は多いが、内なる感動を俳句や短歌に読むときなどを考えるとわかるように、日本人はもともと一人の静謐な時間を味わうすべを心得ていたのではないだろうか。

孤独に否定的な感情を持ち、個人よりも集団としての意思を尊重するといった集団主義は、戦時中や高度経済成長期の中で育まれた行動様式だろう。それは経済成長期においては他国が驚くほどの推進力を生み出す源泉となった。

しかし、集団主義が続けば、内面が成長しないまま大人になる人も増える。日本では、幼児性を持った大人が多いように感じる。自分が大人であるということを自覚しなくてもいい環境が存在し、大人が童心に戻れる場面も多い。しかし、ときに自分と孤独に自分と向き合い、成熟した個人となることを意識することが大切だ。

05.
幸福への近道は
ネガティブ思考の排除

日本は絶対的な宗教を持たないからこそ、いろいろな宗教に対する寛容性はどこの国よりも高い。しかし、宗教性が希薄であることは、自分の内面とどう向き合うかということを考える機会が少ないことにつながる。ネガティブな感情が心を支配したときにどうするか。個人が自分の中で、不安や焦り、感情的な歪みを抱えたときに、それを治療する薬がないのだ。

私は、人間が幸福になるために一番大事なのは、自分の中にあるネガティブな感情を制御できることだと思っている。常に温和で、平常心を保てる大人になるには、不安を見つめ、全てを「成長につなげるもの」として肯定的にとらえて自分と向き合って考えると良いだろう。

06.
後世に対する使命感を持つ

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私は、死ぬことで肉体はなくなっても、魂は生き続けると信じている。死んだら全てが終わりだと考えると、刹那的に生きている間の欲望を追求していきがちだ。しかし、自分が死んだ後も生きている間にしたことが、後世の人に受け継がれると考えることで、一種の責任感を持つことが可能だ。

自分も書物など先人たちの残したものによって成長することができた。後世に対する使命感を持って生きる人間は、永遠に生き続けることができるものである。

07.
“運命の女神”を巻き込み
挑戦し続ける

私は、持っているものを全て捨てて新しい挑戦ができる人を尊敬している。そういう人は、挑戦すること自体に自分の意義を見いだせる人である。瞬間において、すべてを集中し、燃え尽きるように生きるという感覚を持っているから、魅力的だ。

多くの偉人は、過酷な状況に置かれ、それを必死に抜け出した結果として、素晴らしい業績を残している。神様は乗り越えられない試練は与えないというが、少なくともそう考えるべきなのだ。その過酷な状況は、運命の女神のいたずらによるものの場合が多いが、ときには運命の女神を巻き込み、行きたい方向に彼女を連れて行くくらいの感覚を持って生きるべきだ。

08.
自分にとっての“美しさ”に
価値基準をもっておく

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自分の思考や行動を主体的にデザインするという行為には、美しさという概念が含まれている。それは社会的に、あるいは客観的に美しいかどうかということではない。自分自身にとって美しいかどうかが重要なのだ。

それは、自分の美意識を確立するということでもある。単に理屈っぽいことをいう人間になるのではなく、美的感覚を持ち、美しさを追求する心構えを持つ。矜持を持つということだ。私はそうした姿勢に、人としての格好よさを感じる。

不安の時代は、希望の時代でもある。不安を未来への可能性としてとらえ、意志の力を持って不安を力に変える人生。そういう人生を私は生きたい。

不安が力になる
コンテンツ提供元:ジョン・キム

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