結局、トイレの「ハンドドライヤー」と「紙」環境にいいのはどっち?
質問:
トイレに入って手を洗った後
あなたの選択はどっち?
①ハンドドライヤーで乾かす
②ペーパータオルで拭く
正直、好みの問題と言われればそれまで。でも、真面目に考えて実際、どちらの方が環境に優しいんでしょう?
ジャーナルサイト「The Conversation」にオーストラリア・メルボルン大学のSimon Lockrey研究員がこんな記事を寄稿しました。ついに科学的観点から、その答えが導き出されたと。
ついに決着。
ハンドドライヤー
VS ペーパータオル
洗った手を乾かすには、ハンドドライヤーとペーパータオルどちらを使うべきなのか?これは、ある人にとっては衛生面に、またある人にとっては性能面で選択が分かれるかもしれません。ですがどちらを選ぶにせよ、すべての人にとって環境への問題も考慮すべきポイントです。言うまでもなく、我々の選択肢は少しでも環境に優しいものであるべきなのだから。
結局どっちがエコなの?
では、最も効果的なのはどちらなのか?
工業製品やサービスのライフサイクルが環境に与える影響を特定する「ライフサイクル分析」という研究があります。この分析方法は、材料、製造、輸送、使用、廃棄を複合的に捉え、その製品の最も大きな影響を与える重要な部分を算出していきます。今回の研究もこのライフサイクルを分析することで、答えを導き出していきました。
ライフサイクル研究では、一貫して私たちが手を乾かすために使用する電力と、ペーパータオルを使用することによる環境への影響を比較してきました。ハンドドライヤーの製造段階から、ペーパータオルの処分プロセスまで、すべて含みます。どちらを選ぶにせよ、資源となる電力や紙を消費していることには変わりません。環境に与える影響は、エネルギー消費の質と量にも大きく関わってくるのです。
結論:
環境に◎はハンドドライヤー
「蒸発させる」から
「風圧で吹き飛ばす」へ
ところが、あなたもすでにお気づきのように、近年おしゃれで高性能なハンドドライヤーがトイレに登場しています。従来のタイプは手から水分を「蒸発させる」ため、ヒーター機能がついたものが一般的でした。ところが、現在の主流は水分を「吹き飛ばす」こと。つまりは熱せられていない空気を急速に流して、指先から水分を除去しようというものです。
2011年に発表された、マサチューセッツ工科大学(MIT)によるライフサイクル分析から結論づけられたこの回答は、高速ハンドドライヤーと従来のハンドドライヤー、さらにペーパータオルの3つで比較しました。
ハンドドライヤー製品の大手「XLERATOR」や「dyson」が開発した高速ハンドドライヤーは、従来のものに比べ省電力省エネルギーを実現し、圧倒的に性能が向上していることが分かりました。たとえば、乾燥時間を比較すると、従来のものは乾燥に約20〜40秒を要していたところ、約12〜20秒で実現、消費電力も2.4キロワットから1.5キロワット程度にまで抑えることができています。もちろん、最新式のものはさらなる省エネを実現していることでしょう。
研究者はさらに、ドライヤーのための電気の生成および使用、また紙の生産、製造、廃棄に伴う影響も比較しました。すると、やはり高速ハンドドライヤーが最も優れた数値を示しました。この結果は、製造および廃棄の両方において、手の乾燥に2枚以下のペーパータオルを使う、また100%再生紙で作られたペーパータオルを使う場合でも同じ結果に。
つまり、従来型のドライヤーのように熱して乾燥させることから、勢いで水滴を吹き飛ばすドライヤーの仕様に変えたことが、著しく環境負荷を低減している結果につながったと言えるでしょう。
環境意識の高い人は
すでに「マイタオル」持参!
どちらを選ぶとしても、必ず何かしらの問題は出てくると思います。ですが私たちは、従来の製品を超える高速のハンドドライヤー、または環境に優しいペーパータオルを使用する必要があります。
高速ハンドドライヤーを使用することで、電力消費、二酸化炭素排出量を少なくすることができました。これは環境面において、ペーパータオルを使用するよりも大きな利点をもたらす可能性があります。しかし、このトレンドも将来的に変わっていく可能性もあります。たとえば、ハンカチやタオルを携帯し、電力も余分な紙も使わないようにする。すでに、ソーシャルマーケティングでは、ハンカチやタオルを携行することが、新しい高速ハンドドライヤーの利点を上回る可能性を示唆しています。
単なるトイレで手を洗った後の話。ですが、大切なことはすべてのライフサイクルを考慮し、広い文脈で環境について考えることです。もしかしたら、私たちはまだ、手を乾かすことに関してあまり大きな問題意識を感じていないかもしれません。けれど、大きな問題の元をたどれば、ハンドドライヤーかペーパータオルか。この選択は決して小さなアクションではないのです。
Licensed material used with permission by The Conversation