「誰も知らない築地市場」を目撃せよ。映画『TSUKIJI WONDERLAND(築地ワンダーランド)』が見逃せない。
「旨い魚を食べる」。その一点に人生を懸けている職人たちがどれだけいるのか。どれだけの情熱が注がれているのか。そんな思いが伝わってくる映画があります。
なぜ築地市場が世界的に注目されているのかを説明する料理評論家・山本益博氏の語気には、力がこもっていました。
「世界一じゃない。世界唯一ですよ。これに匹敵するものは、世界中に一軒もない。断言できます」。
シアトル国際映画祭で行われた、映画『TSUKIJI WONDERLAND(築地ワンダーランド)』ワールドプレミア上映のチケットは即完売。当日席を確保するために、観客が角をひとつ曲がるほど長い列をつくったそう。では、「TSUKIJI」の魅力とは一体?
魚の流通を最適化するプロ
“仲買人”たちに迫る!
『築地ワンダーランド』は、およそ80年の歴史がある築地市場の真相を、日頃訪れている食のプロたちが言葉を紡ぐことで説明しているドキュメンタリー作品です。
すきやばし次郎、銀座 ろくさん亭、銀座小十、石かわ、nomaなど、東京にある一流店のシェフたちが数多く登場しますが、口々に語られたのは“仲買人”について。
すし匠の親方・中澤圭二氏からは、こんな言葉が。
「良い漁師がいて、良い魚屋がいる。我々は良い魚を分けて頂いて、良い仕事ができる」。
魚を口にするまでの工程を想像しましょう。大きく分けると、魚を釣り、運搬し、選別し、調理します。その中でも仲買人は、調理する人々のために魚を目利きするプロ。
つまりは魚屋ですが、ただ良い魚を選べばいいというわけではありません。誰に、どんな魚を届けるのか。店によって異なる魚選びに対し、最適な品質を追求するのが彼ら。仕事への情熱を語る職人たちの声や眼差しの迫力に圧倒されます。
魚を知り尽くした職人と
世界最高水準の目利き
“魚を選ぶ”と一口に言っても、どの店でどんな料理が出されており、その料理にはどんな状態の魚を使えば良いのか。これを魚の見た目、重さ、触感、季節など様々な要素を元に、最適化するのは至難の業。
ふと、こんな疑問が浮かぶかもしれません。調理をしている料理人のほうが、適した魚を選べるのではないか?答えはNO。その手で触れて選別してきた場数が違いすぎるのだそうです。
それは、グラムを測ればわかるような単純な作業ではなく、手に取って五感で感じなければわからない、経験則からくる職人技。
「選ぶのは卸。文句を言うのが店」。
築地には毎日1,800トンもの水産物が集まります。毎日大量の魚を見て、触れて、届けてきた仲買人たちの“勘”に勝る選別の術はほかにありません。もちろん、自慢の魚を買って欲しいなんておごりはなく、あくまで“買い手が良いと言わなきゃ意味が無い”という強い意思のもと魚を選んでいます。
もちろんアナゴだけをずっと見てきたという職人も。市場に集まる魚の種類は480種ほど。古くから生魚を食べてきた日本人だからこそ集積されてきた技術や専門性の高さが、それぞれの魚に活かされている場所なのです。
一流シェフは
「築地市場」で魚を学ぶ
魚を売った取引先店舗を訪れ、実際にその味を確かめる仲買人たち。そのアドバイスは確かで、彼らなしに店の営業は成立しないと、名だたる料理人たちが語ります。
この職人同士の関係性こそが魅力なのではないでしょうか。信頼できる人から、信頼できる魚を仕入れる。その数値化できない文化が、築地市場の歴史なのでしょう。
「産地直送じゃなく、納得したものを買う」。
と、すきやばし次郎の店主・小野禎一氏。1年間を通して質の良い魚を仕分けられるのは、この市場の規模があってこそ。今年はどこどこで取れたのが良かった、でも来年はわからない。だからこそ、全国から集まる大量の魚から最適なものを選べる彼らなくして、「旨い魚を食べる」ことは成り立たないのです。
日本食の文化を
未来に届けるために
2016年11月に豊洲への移転が予定されているなか、閉店を余儀なくされた店も少なくありません。関東大震災以前、日本橋に市場があった時代から130年間続いた家業が、自分の代で終わるーー。その事実を、親を失った時と同じほどの出来事だと話す店主も。
東京23区にかつて存在していた4,000件もの魚屋は、今では5~600件ほどに減少。年々、日本の食文化は衰退しており、魚の食べかたや特定の味覚がわからない子どもたちが増えています。
監督の遠藤尚太郎氏は、築地という文化と日本人が築き上げてきた食文化の奥深さを、世界に、未来に、伝える使命感があったとコメント。撮影が休みの日も、足繁く市場に通い、職人たちと関係を築きあげたからこそ撮影できた、600時間にも及ぶ貴重な映像を編集し、『TSUKIJI WONDERLAND(築地ワンダーランド)』は完成しました。
なぜ、日本の魚は旨いのか?を築地で働く魚のプロ、仲買人の姿を通して、知られざる市場の本質や日本の食文化の真髄に迫った本作品には、彼らのプライドや世代を超えて受け継がれる知恵、匠の技、その哲学が、鮮烈かつ生々しく捉えられています。
映画の公開は10月1日、築地(東劇)から。その後、10月15日より全国ロードショー開始。トレーラームービーはこちらから。
【作品概要】
■タイトル
『TSUKIJI WONDERLAND (築地ワンダーランド)』■上映時間
110分■公開スケジュール
10月1日(土)築地(東劇)先行公開
10月15日(土)全国ロードショー■監督・脚本・編集
遠藤尚太郎■製作・配給
松竹メディア事業部■公式サイト
webサイト:http://tsukiji-wonderland.jp/
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