「ありがとう、築地」。そんな想いが詰まった1冊の絵本

「築地」であり、「TSUKIJI」。そんな世界一のフィッシュマーケットはいま、揺れる移転問題の渦中にありながらも、ますます存在感を増している。

日本の美食を体現する中心地でもあり、国内はもちろん、多くの外国人観光客の胃袋と感性を満たしてきた。一度でも訪れたことがある人なら、「今までありがとう」が素直な思いなのではないだろうか。

そんな、たくさんの感謝の気持ちをまとめた1冊の絵本がある。それが『築地市場 絵でみる魚市場の一日』だ。

緻密な取材の熱量を
リアルなイラストで楽しむ

モリナガ・ヨウ氏によるこの絵本では、夜23時から朝7時くらいまでの、築地市場がもっとも活気にあふれている時間帯が描かれている。初めての取材で感じた衝撃は

「大きな生き物の中に入り込んだ感じ」

だったとか。

「築地」は、立ち寄る者にも、何かしらの覚悟を求めるような気がする。それが、市場自体のスピード感からくるものなのか、大股で歩いている引き締まった体つきと厳しい顔つきの男たちからくるものなのか、それとも世界中のトップシェフたちですらリスペクトする歴史の重みなのか。

おそらくそのすべてを感じさせる「築地」が、多くの人を魅了させたのだろう。

見開きごとにリアルな日常シーンが切り取られていて、築地に想いを馳せながらも、いろいろな雑学を学ぶことができる。

読めばきっと
おいしい魚が食べたくなる

緻密な取材をもとに描かれたわかりやすいイラストたちは、まさに「大人のための絵本」と言えるかもしれない。

当然、私たちがおいしい魚を口にするまでには、想像をはるかに超える舞台裏があるもの。「築地」は、ただの大きい市場という枠組みにハマりきらず、ひとつの文化であり、現象であり、エンターテイメントであり、江戸時代から続く日常の風景でもある。

そんなことを思いながら、ふと「おいしい魚」が食べたくなる。そんな1冊だ。

TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。