ハワイ生まれのSUPアーティストが描く水面ギリギリの芸術
サーフィンとグラフティをこよなく愛すハワイ・オアフ島出身のアーティストがおもしろい。独学のペインティングに磨きをかけるべくNYへと移住した青年は、自分の特技を融合した作品制作で話題を呼んでいます。
SUPの上で絵を描く元サーファーならではの技法
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アーティストSean Yoro(通称Hula)は、グラフティやタトゥーイングに没頭するまで、10代のほとんどを他のロコと同じようにサーフィンに費やしてきました。「ボクの周りには、ハワイの自然しかなかった」そう語る彼ですが、ハワイ生まれの元サーファーのHulaだからこそ実現可能な唯一無二のスタイルがあります。それが、SUP(スタンドアップパドル)で移動しながら、廃墟となったビルの壁面や、使われなくなった橋脚にペイントを施していく手法。
水面に着くかつかないかギリギリの位置から描くモチーフは、写真と見紛う女性像です。
心の傷と向き合い
自然界と向き合う
ハワイ部族のタトゥー
彼女たちの頬や腕、胸元をよく見ると、パステルカラーのラインが見えます。これは、ハワイ部族の伝統的なトライバルタトゥーなんだとか。
ハワイでは、部族によっては今も成人になると各家ごとに継がれてきた「アウマクア」と呼ばれる守護神(もしくは先祖の神)を、タトゥーとして体に刻む風習があります。そして、先祖が魂になると自然界の動植物へと姿を変え、子孫を見守っていると信じられてきたようです。
自身の絵のモチーフにタトゥーを刻む彼の意図を「Huffington Post」から抜粋します。
「この引っかき傷のようなタトゥーを刻むことで、誰もが抱え込んでいる人生の傷跡を表現したかったんです。その心の傷とどう向き合うか、大切なのはその美しさであり、重要性だと思うから」。
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「水の上はボーダーレス」
青い海を知る男の
自然との向き合い方
作品はどれも時間の経過とともに色が落ち、朽ちてしまうものばかり。それでも彼は意に介さず、「自然がするままを楽しんでほしい」とひと言。海に囲まれたハワイ生まれのHulaにとって、水辺は彼のアイデンティティそのもの。水の上であれば、世界中どこにいたって故郷の青い海とつながりが持てる。口にこそ出さないものの、SUPから水面に描くことは、世界が直面している環境問題を自分なりに理解し、発するメッセージなのかもしれません。
最後にアウマクアへの意識、自然界とのつながりをもうひとつ紹介しましょう。
Hulaの作品に用いる絵の具は、すべてアルカリ精製された亜麻仁油や紅花油など、天然顔料をベースにしたオーガニックな製品。人にも水生生物にも無害なものを使い、流れ出ても海や川を汚さない。それは、海とともに生き、海を愛するハワイアンのこだわりなんでしょうね。