あぐらにクラフトビールで聴く「室内楽」のデリバリーサービス
このところ、NYやLAに暮らすミレニアル世代の若者たちを中心に、あるデリバリーサービスが大人気。それが宅配ピザやケータリングのお寿司なら、ここまで大きな話題にはならなかったはず。届けてくれるのは、「生演奏のクラシック」と聞けば、どう?
室内楽団“出前”します
恋人とふたり夕食感覚で彼らを招く訳ではなく、ホームパーティーの余興のひとつとして(いや十分にこちらがメインで)、自宅のリビングで室内楽コンサートを楽しもうというもの。
ソファに深く腰掛け足を伸ばす人もいれば、フロアであぐらをかいたってOK。その手にはワイングラスやクラフトビール。もちろん、ドレスコードだってありません。普段着で楽しむゆる〜いクラシックがそこにあります。
この自宅と室内楽の生演奏をつなぐスタートアップ「Groupmuse」が発足したのは2013年のこと。チームを率いるCEOのSam Bodkinは、堅苦しいクラシックを自分と同じミレニアルズでも楽しめ、気軽に受け入れてもらうアイデアとして、このサービスを思いついたそう。
現在登録しているプレイヤー数はおよそ1,200人。彼らのほとんどは音楽学校を卒業したばかりの若手音楽家で構成されています。大きなホールでの出演機会が、まだあまり多くない彼らにしても、“リビング演奏会”のメリットは多いようです。例えばお客との距離感、さらには演奏のフィードバックをその場で吸収できる、といった利点も。
クラシック音楽をもっと
自由に、身近に楽しむ
Groupmuseの公演実績は、これまでのべ2,000回以上。「今年10月だけでも70回近いイベントを成功させた」とSam。徐々に活動エリアを広げ、今ではNY、サンフランシスコ、ボストン、シアトルの4都市を中心に展開中なんだとか。
ところで、いくら駆け出しのミュージシャンが中心といっても、ソリストやカルテットを自宅に招く料金って、いったいどんなものなのでしょう。Groupmuseによると、観客の支払いは一律でひとり10ドル(約1,150円)でいいんだそう。そして、1回の公演で演奏者に入るギャラがだいたい160ドル(約18,400円)ほど。
大勢のオーケストラがスポットライトを浴びて演奏するコンサートホールとは、設備も環境も当然違いますが、どっぷりなクラシックファンでもない限り、ラフで自由なスタイルをミレニアルズが受け入れている理由もよくわかる気がします。
自宅のパーティーの場に室内楽団を招く。これだけ聞けば、ただの“お金持ちの道楽”でしょ、なんて節もあります。けれど実はそうではなかった。クラシック音楽への興味関心が薄いミレニアルズたちへ、いかにして魅力を届けるか、その施策にがっちりハマったのが、みんなと自分たちらしく聴くスタイルだったんでしょうね。
最後にGroupmuseの公式サイトから、もっとも刺さった文言をご紹介。
音楽史に残る傑作を友だちと一緒に、自宅のリビングで楽しみませんか?登録しているアーティストであれば、誰でも呼ぶことができます。もちろん、ビールやワイングラス片手に。ライブだって、みんなで共有したほうが楽しいでしょ。