聞こえてくるのは風の音だけ。「フィヨルドクルーズ」で全身を研ぎ澄ます旅

北欧・ノルウェー旅のハイライトのひとつといえば「フィヨルド・クルーズ」。中世の面影を色濃く残す港町・ベルゲンからノルウェー国鉄(NSB)とバスを乗り継いだ私は、世界遺産のネーロイフィヨルドのクルーズ船が出発する、グドヴァンゲンへとやってきました。

ヴァイキングを彷彿とさせる可愛らしい船乗り場で待っていると…。

「SHIP OF THE YEAR」にも輝いた
ハイブリッドなEcoシップ。

クルーズ船が到着。ここから約2時間かけて、フィヨルド沿いの小さな村・フラムへと向かいます。

じつはこの「VISION OF THE FJORDS」という船は、ノルウェーのアワード「SHIP OF THE YEAR」にも輝いたほどのハイブリッドなエコシップ。2016年の7月にデビューしたばかりなのです。

3階建ての船体は、ブラック&ホワイトのシンプルシック。西ノルウェー地域でよく見られるつづら折りの坂道をイメージさせるアプローチが各階の甲板をつなぎ、遠目から見れば、それはスタイリッシュなM字模様。

大自然と調和してその美しさを引き立てつつも、そこはかとないセンスの良さがキラリ。

澄み切った空気に
全身が研ぎ澄まされていく。

いざ出発すると、この船がハイブリッドクルーザーである理由がすぐに分かりました。なんと、エンジン音がまったくしないのです!まるで空を飛んでいるかのように、フィヨルドの雄々しい絶景が迫りくる入江を滑ってゆきます。

耳をすませば聞こえてくるのは、風の音のみ。澄み切ったクールな空気に、全身の感覚が研ぎ澄まされていきます。

「top of クルーザー」=「最上階の甲板の上」に立っていると、自分も風になってフィヨルドの大自然を吹き渡っているような不思議な感覚になりました。

小さな家がポツン、ポツン。

フィヨルドの麓にはリアル「ノルウェーの森」が広がり、よく見れば小さな家がポツン、ポツンと建っているではありませんか。うん、これは村というより集落。

集落にもよりますが、住んでいるのは十数人程度だそう。夏の間だけチーズ農家としてフィヨルドにやってきてヤギを飼うなんて、おとぎ話の世界みたい。

甲板で船長さんたちを発見。制服も洒落ています。

取材した冬季は、しばらく甲板に出ていると寒さが体の芯に響いたのですが、ひとたび船内に入れば、ほかほか。コーヒーや軽食をいただきながら、エコシップの窓の外を流れる絶景に見入るのでした。

フィヨルドの山を背に建つ
4つ星ホテル「フレトハイムホテル」へ。

やがてエコシップは、ノルウェー最大の渓谷・ソグネフィヨルドから分岐したアウルランドフィヨルドの最果ての小さな村、フロムへと到着。

山岳の街・ミュールダールまで標高差864mの道のりを約2時間かけて走る山岳列車・フロム鉄道の始発駅でもあるこの地は、鉄道旅ファン憧れのディスティネーション。

その日の宿は、フェリー乗り場からすぐ、切り立ったフィヨルドの山を背に建つ4つ星ホテル「フレトハイムホテル」。北欧らしい木をふんだんに使い、まるで屋根裏部屋のような古めかしい造りが旅情を誘います。

ホテルのライトや暖炉のオレンジが
とても優しく見える。

ディナーはホテル内レストランで、ジャガイモと長ネギのスープから始まり、鶏の胸肉マッシュルーム添えや、ベリーのソースが絶品のキャラメルアイスなどが楽しめるコースを(※季節によって変わります)。

ホテルのライトや暖炉のオレンジがとても優しく見えるのは、ピンと張り詰めて冷たい外気の中を旅してきたからでしょうか。フィヨルドの小さな村に建つホテルの、ぽかぽか心地よいレストランでいただく北欧料理は、一生の思い出になるはず。

Photo by 千倉志野(Chikura Shino)