科学者らが「北極の氷」を再凍結するためのプランを発表
地球温暖化の甚大な影響を受けている、北極圏。気温上昇により年々溶けていく氷は、深刻な環境問題のひとつとして、世界中でその行く末が注目されています。
そんな問題を解決するため、科学者たちが新たに立ち上げたプロジェクトは、北極の氷を「再び凍らせる」というもの。
「再凍結」で
17年分を取り戻す?
アリゾナ州立大学の地球宇宙探査班(SESE)のSteve Desch教授を中心とした研究チームは、北極圏の「再凍結」計画を2016年の年末に公開。この論文では、大量の風力ポンプを設置し、海水をスプレーすることで氷を厚くする方法が提唱されています。
研究チームは、氷がどのように凍結するかを徹底して調査。その結果、冬期の夜間に1.4メートルの海水を汲み上げれば、ひと冬の間に約1メートル厚の氷を生産できると計算しました。
氷が1メートル厚くなれば、温暖化の影響を17年分ほど巻き戻すことが可能なのだそう。つまり「2030年には温暖化の影響で全ての氷が溶ける」とも言われる現状を打破できる可能性があるのだとか。
ちなみにどのくらいの
風力ポンプが必要なの?
まず、北極海の面積は約107平方キロメートル。この全面積の10%にスプレーを撒くためには、大量の風力ポンプが必要で、その数はなんと約1千万個。
ひとつの装置に必要な風力タービンの大きさは、1個につき直径約2m。その重量は4tにもなります。さらにこれを浮かせておくために必要なブイはほぼ同じ重量。全体としては、装置ひとつあたり10t近い鉄が必要になると試算されています。
このプロジェクトを進めるために必要な予算は、約5,000億ドル(約57兆円)とも算出されていて、さすがに一国が負担できる額ではありません。世界各国の政府が分担して資金調達することを想定しています。
圧倒的なプランは
圧倒的な破壊の埋め合わせ
ここまでの内容を読んで、みなさんはこの計画についてどう考えるでしょうか。途方もない、現実的ではないプランだと批判する人も多いはず。
しかし、Desch教授はこのように語ります。
「このプロジェクトは壮大で、今のところ実現は夢のような話です。しかし、地球を破壊してきたのは、他ならぬ人類です。もしこの計画が狂気に聞こえるとしても、今こそ私たちは、この計画を現実のものとするために歩みを進めなくてはならないのです」
「氷の回復」という壮大すぎるこのプランですが、確かによくよく考えてみると、回復にこれだけの規模のプロジェクトが必要になるということは、同じ規模の破壊が行われたということでもあります。
人間の手によって壊されたものは、人間の手によって取り戻すべき、というひとつのメッセージなのかもしれません。