「観た人の人生を変えたい」松居大悟を刺激する6つのコト

映画『アフロ田中』で監督デビューしたのち、Vineで注目された現役女子高生などを起用した映画『私たちのハァハァ』や、6人の名脇役が本人役を演じて話題になったドラマ『バイプレイヤーズ』などなど、斬新な発想の作品を次々と世に送り出し、若者を中心に絶大な人気を得ている松居大悟。

漫画家を目指した高校生時代に、作品を見せた編集者から「お笑い芸人がやっていることであり漫画でやることではない」と一蹴された彼が次に起こした行動は、お笑いコンビの結成と、M-1グランプリへの出場でした。

予選敗退したものの、敗因は演技力が足りなかったからであると考え、大学の演劇サークルに入団。そうして前進し続けてきたいま、彼は劇団ゴジゲンを主宰し、脚本制作や演出を手がけ、自身で出演もしながら、そのほか監督業などなど多岐にわたり活躍中。

数々の挫折を乗り越えながら、どんな視点や考えかたを培ってきたのでしょうか?そして、アイデアを生みだすために一体どんなことから日々刺激を得ているのか。詳しくお話を聞きました。

先日、予定していた舞台が中止になったと突然言われたんです。劇場が2週間も空いてしまったんですよ。一体どうするんだ!って思うでしょう?

でも、気持ちを度外視した理屈に直面したときにこそ、そのときの感情を作品に残したいと強く感じるんです。だから、舞台が突然中止になるストーリーの映画をつくろう、劇場に乗り込んでガラガラの客席の前で芝居をしようじゃないか、と撮影をはじめました。

落ち込んだときにこそ何かが生まれるもの。その瞬間の感情が、あとになってどこか別のところに行ってしまうと考えたら、いてもたってもいられなくなる。ワンカットでもいいから記録しておきたいって思ったんです。

岡本太郎は、“迷ったときは困難なほうを選んできた”と言い、北野武監督は、“どうせ死んで楽になるのだから、生きている間は苦しまなきゃ”と言いました。その考えかたに影響を受けています。

逃げる必要はなくて、それでもなんとかモノをつくっていくことが生きていくってことなのかなと思います。

前と同じもの、想像できるもの、見えるもの、それらしいものをつくっても意味がないんです。これはドラマ?ドキュメンタリー?演劇?それとも映画?そういうものが好きです。

展開が読めないものでないと、面白がってもらえません。そのまま通り過ぎてしまうようではいけない。30代になってからどんどん幼くなってきていて、衝動的なものを大事にしたいという思いが強くなっています。言葉にできない感情を大切にしたい。

テンションが上がった状態を「歓び」と呼ぶことは必要かもしれません。でも、中高生みたいに、あの娘のことを好きで、話しかけたいけどできなくて、連絡したのに返信こなくて、アイツと話してて納得できない…みたいな、いろいろな気持ちが同時に起きてモヤモヤしているのがいい。

だから、“こういうものである”と定義してしまうような表面的なことは、現場で言わないようにしています。どんな作品も、まずはスタッフに思いを伝えることからはじめています。

昔は自分のアイデアをどうしたら実現できるのかだけを考えていました。ひとりの想像力には限界があるんです。25歳の頃には、ついていけないと劇団員が辞めてしまったこともありました。

映画や演劇は総合芸術ですから、だれかと一緒に考えることで道が開けたんです。信頼することで肩の荷が軽くなるし、悩むのが楽しくなった。自分をどうよく見せるかより、作品がどうやったらよく見えるのかを本気で考えて、それぞれの視点から意見を話してくれる人がいれば、どんなことでもなんとかなります。

現場では思い通りにならないことがたくさんあります。『バイプレイヤーズ』の撮影初日は、6人の名脇役からいただいた提案に圧倒されて思考が停止しました。スケジュールを飛ばして話し合いの場をつくりました。そうすれば、みんな教えてくれるんです。それが面白い。

最初は6人が恋愛をする話になる予定だったんです。が、話をつくっていく中で本人役を演じてもらうことになっていったんですよね。脚本と提案は半々で、書いていたものをアレンジしたり、ピー音やモザイクが入るタブー回をつくったり、楽しくなりました。でも、過去作品でもそういうことは多い。

ぼくは、だれよりも不安で、だれよりも弱音をはく。だから演出家や監督らしくないんですけどね。

集まる人の数や予算の規模が大きくなればなるほど、やらなければいけないことのほうが大きくなり、ハードルが高くなります。作品もよく見えやすくなってしまう。 

だれだって楽なほうがいいし、いまだに毎回悩むし、ひとりで刺激のある道を選ぶのは不安だと思います。結果論でもありますし。

でも、企画が成立しやすいとか、予算があるとか、スケジュールがはまりそうとか、そういうことでは、いままで一緒にやってきた人たちに説明ができないんですよね。そういう責任を感じます。

人が好きだから、困難でも刺激的な道を選ぶのかもしれません。難しいことに挑戦するほうが、人と人は強く団結すると思うんです。みんなの力が必然的に必要になり、団結していいものが生まれる。

そういう仕事をともに経験した人のほうが長く付き合っていると思います。ひとりのカリスマより10人の凡人。それって、かっこいいじゃないですか。

脚本を書きはじめるときなど、仕事の入り口は一番しんどいんです。パソコンの前に向かえないんですよ。やらなきゃいけないってことはわかっているんですけどね。そんなときには、ぐぐっと炭酸水を飲んで、やるぞ!と気合を入れます。

甘くないので飲みくちがスッキリしているし、何かを求めているときのスイッチみたいな。この、カーっとこらえている感じ。なんというか、刺激や震えるような感覚が欲しいときに、げんをかつぐようにして飲めば、“行くぞ”という気持ちになれます。

最初はカッコつけて飲んでいたんですが、気がつけばよく飲むようになっていました。

気合をいれる時に、炭酸水を飲むことが、ちょうどいい刺激になるんです。やる気を出したいときにコーヒーって気分でもないなあ…なんてときにもちょうどいいからか無意識に選んでいます。グラスにウイスキーと炭酸水を注いでハイボールをつくることもよくありますね。

心躍る刺激的な挑戦を求めているなら、「ウィルキンソン」の研ぎ澄まされた爽快感とキレの良い味わいはピッタリ。あまり飲んだことがないというあなたも、仕事に本腰を入れるときなどに、ぐぐっと一本試してみては?