父の死と向き合い、蜷川実花が撮影した「うつくしい日々」
「死がもたらすのは、終わりだけじゃない」。写真から、そんな言葉が聞こえてくるような気がします。これは、蜷川実花さんが昨年の春、父・幸雄の死に向き合う日々を撮影したもの。見ていると、胸の奥がギュッと締め付けられるような切なさを感じます。しかし、伝わってくるのは悲しい気持ちだけではありません。
これまでの展示は、人々の目を楽しませるような色彩豊かなイメージが強くありました。だけど今回は、心にぽっと光が灯るような柔らかい優しさで溢れているのです。
「さよなら」をした
父の目から見た世界
朝起きたら信じられないくらい空が青くて、あまりにも綺麗だった。 どうせ逝くならこんな日がいいよね、って思った。
「うつくしい日々」と、名付けられたこの作品。父親である蜷川幸雄さんの死と向き合うために、この世を去ろうとする「逝く人の目線」で撮影されています。
キラキラと輝いていて、どこか希望を感じるのです。
「死」との出会いが
景色を変えた
実花さん自身も、「どうしてこんな写真が撮れたのかわからない」と語っています。
そんな作品から見えるのは、大切な人の死と向き合った時にしか出会えない景色。尊い命を失うと、悲しみや不安で心はいっぱいになります。そんな時に、ふと周りを見渡すと、青く広がる空や力強く芽を出す植物など、目に入った全てのものから、あたたかい「生」を感じることができたそうなのです。
「うつくしい日々」は、亡くなった父と今を生きる娘の視点が重なって撮影されています。止まってしまったように思えた命は、実はそのまた子どもへと引き継がれていることが伝わってきます。
【開催要項】
◾️展覧会名:蜷川実花 「うつくしい日々」
◾️会期:2017年5月10日(水)〜5月19日(金)(会期中無休)
◾️時間:11:00〜17:00(水曜は20:00まで/入館は閉館時刻の30分前まで)
◾️会場:原美術館
◾️住所:東京都品川区北品川4-7-25
◾️当日券:一般1,100円