「できることにフォーカスする方が楽しい」 蜷川実花がZoom撮影に込めた意味とは?
情報をキャッチするのが早い人なら、もう、すでに知っているだろう。
写真家・映画監督の蜷川実花さんがオンライン通話サービス「Zoom」を使用し、女優・池田エライザさんをリモート撮影したことを。
4月20日に蜷川さんのTwitterとInstagramで画像が公開されてから、たくさんの人がポジティブな反応をしていて、複数のメディアでも取り上げられている。
だけど、その情報だけではなんだか物足りない。ほとんどの人がやったことのない取り組みだからこそ、その詳細が気になる。もっと言えば、その真意を知りたい。
ということで、蜷川さんに取材を申し込み、実際にお話を聞くことにした。
「心の持ちようとアイデアで、
辛い状況を乗り越えられるといいな」
新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大により、様々な国や地域で外出自粛要請が出され、私たちの生活に不自由が生じているのはご存知の通り。その影響で社会にネガティブな雰囲気が漂っているかというと……意外とそうでもない。
たくさんの人たちが自ら行動を起こし、他の人を巻き込みながら、困難な状況を一緒に乗り越えようとしている。
蜷川さんもそのひとりだ。
「今、何かできることはないかな?と考えていて、あ、これなら成立するかな、と。
こういう時にできないことにフォーカスするのではなく、できることにフォーカスする方が楽しいし、ポジティブだなと思ったので」
最近、「Stay Positive」「Stay Creative」という言葉をよく耳にするようになったが、彼女の姿勢はまさにその象徴だろう。モデルとなった池田さんもまた、前向きだったという。
「エライザにリモート撮影してみない?と提案したら、すぐに『面白そう』と返事をくれて」
とはいえ、気持ちだけで撮影ができるほど簡単ではないはずだ。蜷川さんは既存の撮影方法と比べて、こう振り返る。
「異なる点はたくさんありすぎて(笑)。
直接会えないので、より撮る側の指示を明確に伝えなくてはいけないのは難しいですね」
“オンライン会議のテクニック”を紹介している記事が多く公開されていることを考えると、蜷川さんの言葉はより分かりやすくなる。
確かに会話のスピードは遅くなるし、思った以上に自分の考えはなかなか伝わらない。
「あと、より写る人との関係性がでるのも、面白くもあり難しいところ。
でも、相手がどこにいても、どの国にいても、撮影ができるのはいいことですね。
今回は“リモートでここまでできるんだ”ということを目指していただけなので、他にもやれることがあると思います。
例えば、すごくプライベートな雰囲気の写真も撮れるだろうし、いろいろな可能性を感じますね」
なるほど。
では、最後に、蜷川実花がリモート撮影を通して伝えたかったことは?
「今の辛い状況のなかで、どれだけ楽しい幸せなことを見つけられるか……それは“心の持ちよう”と“ちょっとしたアイデア”で、もしかしたら乗り越えられることもあるかもしれないなと思っていて。
そんなことを少しでも提案できたらいいな、と」
木村伊兵衛写真賞ほか数々受賞。映画『さくらん』(2007)、『ヘルタースケルター』(2012)、『Diner ダイナー』(2019)、『人間失格 太宰治と3人の女たち』(2019)監督。Netflixオリジナルドラマ『FOLLOWERS』が世界190ヵ国で配信中。映像作品も多く手がける。個展「蜷川実花展—虚構と現実の間に—」が全国の美術館を巡回中。2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会理事。
WEBサイト:https://mikaninagawa.com/