パスポートケースから変える、イスラムフォビア撲滅のメッセージ。
ちょっと見慣れないデザインの、パスポートケース。
モチーフは、アラベスクなどの美しい幾何学模様や、アフガンストールだったりとイスラム文化を連想させつつ、目新しさを感じます。
そして、デザインだけではなく、書かれているメッセージにも深い意味が込められているのです。
イスラム教徒を
「ひとくくり」にしないで。
このパスポートケースは、世界人権団体NGOの「アムネスティ・インターナショナルUSA」によるキャンペーンの一環で作られたもの。
このパスポートケースの狙いは、イスラム圏の人々が入国するとき、その国の最初に出会う国民である空港職員に、平和と寛容のメッセージを伝えること。
書かれているのは、コーランから解釈された「平和のためのメッセージ」なのです。
「良いことの報いは、良いことだけ」
「ひとりの命を救えば、すべての人類を救うことにつながります」
「良いことをするために互いに競争しよう」
「信仰している人たちに心から憤りを感じてはいけない」
「愛情、慈悲、ひとつの体であるかのようにお互いを思いやりなさい」
「心を柔らかくして他の人に奉仕すること」
「完璧な人間を見つけることではなく、不完全な人を見て学ぶことで、私たちは愛し合う」
「かつてあなたの敵であった者が、あなたの親愛なる友人になることを考えてみなさい」
「心の中で優しさを持つとき、あなたは世界で最も美しい人になる」
もっとお互いを良く知ろう。
アメリカの入国規制で、突然6万人ものイスラム圏の人々がビザを無効にされたり、空港に到着しながら、とんぼ返りを余儀なくされるなど不当な扱いを受けたニュースは記憶に新しいところ。
しかしヨーロッパでも、政府が米トランプ大統領への批判を表明しつつも、民間では入国規制に賛同するデモが起きるなど、イスラムフォビアが起こる現在の世界情勢は、ムスリムの人々の渡航や生活を難しくしています。
そんな世界情勢を少しずつでも変えたい、イスラム教が憎悪を呼ぶ宗教ではない、と知ってほしいと、このキャンペーンが始まりました。
まずは、空港職員の対応を変えるところから。
英語でメッセージが書かれているのは、どこの国でも理解してもらえるようにするためなのです。
「ムスリムじゃないけど
使ってみたい」
を目指して
「アムネスティ・インターナショナル」では、このパスポートケースを世界各都市の空港で販売、最終的にはオンライン購入ができる状況を目指しているとのこと。
パスポートのケースだけじゃなくて、手帳カバーに使ってもいいでしょう。
すでに50名以上のデザイナーが賛同し、デザインを提供。キャンペーンサイト「SKINS OF PEACE」では、パスポートケースの一覧が見られます。
サイトからデザインをアップロードすれば、新しいデザインとして採用される可能性もあるそうです。また、収益はすべて、難民の救済活動や、イスラムフォビア撲滅活動に使われるとのこと。
かつて、オスマン帝国ではその巨大な国土の下、多種多様な宗教が共存していた時代がありました。お互いの宗教観を否定しない寛容さを持ち、共存する道は、まずこのカバーを使って、イスラム文化に親しみを持つことから始まるのかもしれません。