クリエイターの頭の中はどうなってる?Netflix『アート・オブ・デザイン』の魅力
デザインやアートのドキュメンタリーって聞くと、いい感じの音楽に乗せた、ミニマルで都会的な、いわゆる「おしゃれな作品」を連想するかもしれない。
そんなイメージを振り切って、純粋にアーティストの“頭の中”を見せようとしてくれるのがNetflixオリジナルの『アート・オブ・デザイン』。今、世界中のクリエイターが注目しているドキュメンタリーだ。
アーティストやデザイナーって、なんとなく遠い世界の⼈たちに思えるけど、じつはデザインは「日常」に溢れてる。たとえば今いる建物、使っているプロダクト、もしかしたら食べているものまで…。緻密な計算の元にデザインされているのかもしれない。
たった10分間で作った野菜炒めを食べてるって? そのとき、無意識に自分好みの味になるように調味料を工夫したり、シャキシャキの食感になるように火の強さを調整したはず。言ってみればそれだって、クリエイティビティを使った立派な「デザイン」じゃない?
デザインとは、シンプルに「考えること」。この作品から伝わってくるのは、そんなメッセージ。
デザイナーだって
ひとりの人間だ
全8エピソードから構成されるこのシリーズでは、毎回世界最⾼峰のデザイナーたちが主人公になる。彼らの作り出す素晴らしい作品というよりも、彼らのなんの変哲もない日常を通して、どうやってアイデアを出すのか、どうやって物事を見ているのか、という点にフォーカスしている。
たとえば、第1話のデザイナーはクリストフ・ニーマン。「The New Yorker」の表紙で有名なイラストレーターである彼は、自分の仕事の日常はとっても単調なものだと語る。デスクに座り、アイデアが思い浮かぶまでじーっと待ち続け、何か思い浮かべばラッキー、もちろん思い浮かばない日もある。そこから見えてくるのは、決してデザイナーがクリエイティブで華やかな一面だけではない、ということ。
彼らは、時に家族について語ったり、抱える不安を露呈したり、また成功の陰に隠れた⾒栄や強がりも見せてくれたり。やりすぎな演出なんてひとつもなく、ありのままを伝えてくれる。でもなぜかそれぞれの人格を理解していくにつれ、どうして彼らの作品が魅力的なのか、あるいは機能的なのかが理解できてくるから不思議だ。
このシリーズを通して、あなたはトップデザイナーたちをもっと身近に、そしてもっと愛おしく感じられるはずだ。
ステージデザイナーって?
馴染みのない職業
『アート・オブ・デザイン』では、グラフィックデザイナーやインテリアデザイナーといったクリエイティブたちに加え、「シューズデザイナー」や「カーデザイナー」、はたまた「ステージデザイナー」といった、すぐにはその仕事ぶりがイメージできない人たちも登場する。
たとえばナイキの「エア・ジョーダン」や「エア・マックス」を知らないという人はほとんどいないと思いますが、これをデザインした人こそが第2話の主人公ティンカー・ハットフィールド。
斬新かつ洗練されたスポーツカーをデザインしているラルフ・ジルは、全自動運転のファミリー向け電気自動車のデザインにも携わっていて、私たちの未来を担っているひとりといってもいいほど。
さらに、ステージデザイナーのエズ・デブリンは、基本の演劇をカバーすることはもちろん、ビヨンセやU2など人気音楽アーティストのコンサートステージなどもデザインしている。
こうやって並べてみると、私たちの身近にあるすべての物事が丁寧にデザインされていることがわかる。「そうだったんだ!」と思える知識を広げてくれるだけではなく、物事がどういうプロセスで生み出されて、それを作った人はどんな思考で作り上げているのか、もしくはどんなメンタルで生活しているのかまでを掘り下げた、極上のドキュメンタリーなのだ。
「アート・オブ・デザイン」Netflixで独占配信中