クーラー嫌いな人が知っておくべき「古民家」の涼しい暮らし

もうすぐ、夏。あらゆる鬱憤を吹き飛ばしてくれるようなあの解放的なムードを待ち焦がれつつ、止めどなく汗の吹き出すウダるような暑さはやっぱり苦手。かといってクーラーがんがん効かせると風邪ひいちゃったりするし、かくも夏場の体調管理は悩ましいわけで…。

そういえば。電気やクーラーのなかったその昔、例えば江戸時代の人たちは一体どうやって夏の暑さをしのいでいたのでしょう?地球温暖化の影響がまだなかったとはいえ、きっと夏は夏で暑かったはず。そんなクエスチョンマークが頭ん中を巡るなか、Facebookフィードに流れてきた「古民家に学ぶ暮らしの工夫」というワークショップの案内。なんでも夏の暑さ対策として井戸水を活用すべく、母屋の屋根を手作業でリフォームするとのこと。なんだか妙に面白そうだったので、水無月の某日、東京は国立市にある古民家を訪ねました。

情緒溢れる古民家へようこそ

その築70年ほどの古民家は、江戸時代から続く旧家「本田家」の敷地の一角にあります。現在は「やぼろじ」というシェアオフィス兼コミュニティとして、カフェ、工房、ガーデン、建築家、デザイナー、ギャラリーなどが入居。また、住や食、農や自然など“暮らし”に関するワークショップやガーデンパーティーなどのイベントも開催され、この地に欠かせない地域活性の場となっています。

約360坪の敷地には、古民家のほか、広々とした池のあるお庭、離れ、井戸小屋、蔵、畑が。車通りの多い街道沿いにありながら敷地内はとても閑静で、なんだかここだけ時間が止まっているような不思議な感覚に襲われてしまいます(とっても居心地よくて落ち着くわぁ…)。

「なるほど!」が満載の
ワークショップがスタート

午前10時にスタートしたプログラムは、まずはじめにやぼろじを統括されているWAKUWORKS代表の建築家・和久さんから、古民家を巡る歴史について、そして今回のワークショップの概要・目的などについてレクチャーしていただきました。

暑さや寒さって、気温だけじゃないんですよ。気温と、天井とか壁の表面温度。これを足して2で割ったもの。だから、いくらエアコンで涼しくしても蓄熱して表面温度が高いままだと、体感的には涼しく感じられないんです。そこで今回は屋根に井戸水を散水して表面温度を下げようという計画で、要は「打ち水」ですよね。打ち水は気化熱で気温が下がるので。

興味深いお話ばかりで、ふむふむと頷きながら聞き入る参加者一同。で、レクチャーの後は和久さんの案内で敷地内の散策へ――。

裏庭にある大きな古井戸。ここから水を汲み上げます

旧家「本田家」は代々村医者の家系だったそうで、当時の道具類がたくさん

暖かな日差しの差し込む縁側

壁の欄間(らんま)も通気をよくして涼しくするための先人の知恵

屋根裏って、どんなところ?

敷地内をひと通り巡った後は、NPO法人「くにたち農園の会」理事長でもある小野さんに導かれて、いよいよ押し入れの天井から屋根裏に潜入!

何しろ入り口が狭く、薄い板一枚でモロい足場もあるので、恐る恐る、慎重に登っていきます。

屋根裏に登ってみると、そこはムッとするような熱気に満ちていて、かなり暑い…(直射日光、加えてちょうど階下のキッチンから熱が吹き上がってくるのです)。ここにバケツリレー方式でグラスウールの断熱材を運び入れ、隙間なく敷き詰めていきます。

前日も作業されていたので30分ほどで完了したものの、手はホコリで真っ黒。そして文字通り滝のような汗が。それもこれも快適な夏を迎えるため、オレ、がんばったッス!

Mission :
井戸水を屋根に撒くべし!

屋根裏に断熱材を敷き詰めた後は、裏庭の井戸から水を汲み上げるホースの設置作業がスタート。長〜いホースを古民家の壁につたわせて、ぐいっと屋根の上まで引っ張り上げます。そして、一行はハシゴで屋根の上へ。

個人的に人生初のルーフトップ。瓦屋根の上を歩くのがなかなかスリリングで足がガクブルでした(のび太くん、よくこんなとこで寝てたな…)。小刻みに震えている筆者を尻目に、小野さんたちは勇猛果敢に散水ホースを設置していきます。

セッティングが完了したら、いざ井戸水を放射!写真ではわかりづらいかもしれませんが、細かなミストが勢いよく吹き出してめちゃ涼しい!これで真夏の太陽で熱された瓦屋根もばっちりクールダウンさせてくれるはず。

約3時間に及ぶ作業を終えて、この笑顔(右から小野さん、「くにたち農園の会」の村井さん、そして古民家鑑定士・冒険家の稲村さん)。

ワークショップというか普通にしっかりワークした感じですが(それもなかなかハードに・笑)、古き良き時代の“営み”のようなものに触れられて、そして緑豊かな環境でカラダを動かして、とても気持ちのいいひと時でした。

果たしてこの散水装置がどれくらい活躍してくれるのかは、この夏、やぼろじを訪れてあなた自身で確かめてみてください。

併設された韓国食堂で
ランチを堪能

そうそう、作業の合間には、やぼろじに併設されている韓国料理食堂「つちのこ食堂」のランチをいただきました。

近隣の畑で採れた新鮮なお野菜をはじめ、ローズマリーのチキンソテー、水キムチなど、いずれも美味。そして参加者のみなさんとの会話もたのしくて(中には自分で古民家を購入された方も!)、身もココロも潤うような時間でした。

毎週月・火曜日のお昼時にオープンしているので、こちらもぜひ。詳しい営業時間などは公式HPでご確認を。

Photo by Akihiro Okumura(TABI LABO)
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。