千葉・長南町にある、築160年の「リノベ古民家」がこんなにも居心地がいい理由

立派な門構えから一歩足を踏み入れると、緑あふれる自然に歓迎された。その向こうには大きな日本家屋の屋根が見える。

千葉の房総、長南町(ちょうなんまち)で現代に蘇った古民家、その名前は「芳泉茶寮」(ほうせんさりょう)だ。

古民家だけど
「おばあちゃんちみたい」ではない

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©2018 芳泉茶寮

元の建造物に敬意を払いつつ現代技術でリノベーションし、時の流れをきれいに残した空間にアンティークな家具がマッチしている。

「芳泉茶寮」はカジュアルに、しかし素人目で見ても品質の高さを感じる食器やカトラリーで、本格的なティータイムやランチタイムを提供している(営業予定は不定期のため要確認のこと)。

さまざまな分野のプロフェッショナルを呼んだイベントを主宰するなど、長南町の新しいスポットとして注目されている。

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©2018 やなぎさわ まどか

ひとことで古民家と言っても、ここは築160年。慶応元年に建てられた記録が残っており、代々この町で神官を務めたご家族が暮らし、町の人たちも頻繁に訪れることが多かった場所。

いわば、長いあいだ長南町をさまざまな角度から見守ってきた存在といえる。

近年は空き家状態だったが、約6年前に新たな主人(あるじ)を得たことでまた美しく蘇った。主人になることを決意した高橋信博(たかはし のぶひろ)さん、裕子(ひろこ)さんご夫妻に案内していただいた。

都会で生まれ育った夫婦が
即決した「終の棲家」

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かねてより「早めにリタイアして田舎でのんびり暮らしたい」と話していた彼らは、縁のある限り各地に出向いては物件チェックを繰り返し、ある時、いくつもの偶然が重なってこの家に出会ったという。

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©2018 やなぎさわ まどか

のちにカフェスペースとなるキッチンスタジオが完成した頃から、裕子さんはそれまで都内で開催していた料理教室をこの場所に移動。食材は、丁寧で誠実に取り組んでいる生産者さんから購入することに決めていた。

「ある農家さんから買った人参が、あまりにもおいしくて。あるときドレッシングに加工してその農家さんにお渡ししたら『自分じゃこんなこと思いつかない』と言ってすごく喜んでくださって。あぁ、もしかして私たちがお役に立てるとしたらこういうことなのかな、と」

それ以来、仕入れ先の7割は地元生産者、それ以外も実際に人柄をよく知る人たちから適正価格で仕入れを続けている。

ちなみにその人参ドレッシングは現在、「芳泉茶寮」を代表する人気メニューのひとつだ。

夫婦のストロングポイントが
古民家の新しい風に

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基本的にすべておふたりで運営しているものの、メニューやどんな加工品を作るかといった食の選択は「裕子さんの好みやセンスによるものが大きい」と、信博さん。

それまでも料理教室の主宰はしていたけれど、基本的に “主婦” という存在で信博さんを支えていたのが裕子さんだった。しかし、彼女の審美眼に絶対的な信頼を持っていた信博さんは「彼女の選択することが暮らしの要になる」と感じたと言う。

それは例えば、リフォーム時の空間デザインや調度品選び、抜かりのない料理の素材選びや調理スキル、接客など、裕子さんを中心にすることでこの古民家に活気が戻ると予想していたかのように。

「だから今後の暮らしでは、僕が裕子をサポートする役に徹しようと思いました」

ふたりのビジネスプランとも言えるし、同時に大きな愛情が感じられた。

無理をしない、ちょうどいい、
快適な町で

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©2018 やなぎさわ まどか

お世辞にも便利な場所にあるとはいえないが、今またここに人が集まり、コミュニティが始まりつつあることはまったく不思議ではない。爽やかな海風が山に当たって跳ね返り、「芳泉茶寮」のある場にやさしく吹き込んでくれる。

自分の視界を占める空のブルーは圧倒的な面積で、耳を澄ましても人工的な騒音はない。ここでおふたりの笑顔と優しい人柄に迎えられたら、緊張がほどけるし、心も落ち着き始めるだろう。

160年という長い間たくさんの人を見守り続けてきたこの家は、自然界の一部として、人と共に “呼吸” をしてきたのかもしれない。

いま再び時を経て息を吹き返し、安らぎをあたえる場となって、訪れる人を大きく包み込んでいる。

「芳泉茶寮(ほうせんさりょう)」

住所:千葉県長生郡長南町蔵持1038
TEL:0475-47-2500
公式HP:http://www.healthytastyandwise.com/
公式SNS:Facebook

Top image: © Akiko Sameshima
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