どれだけAIが発達しても「営業職」だけはなくならない理由
AIの進化によって、数多くの職業が失われるという説があります。今でもすでに、機械化によって職を追われる人々が出てきている状況です。
しかし「Inc.com」のライターJeff Hadenさんは、LinkedInマーケティング部の責任者を務めるJustin Shriberさんの言葉を用いながら、「営業職はAIに職を奪われることはない」と説いています。
今ある職業の49%が
AIに奪われうる
2016年、あらゆる企業がAIの導入を視野に入れ、特にFacebook、Amazon、GoogleなどといったIT企業がAIの研究で協力することを発表し、大きな話題となりました。「Bloomberg Terminal analysis」によると、人工知能の導入を発表した企業の数が、2014年の20未満から200まで急増していることも明らかになり、この波は今後も続いていくものと考えられます。
AIは仕事の効率を上げる一方で、労働者から仕事を奪うのではないかという懸念もあります。既に製造業などではかなり機械化が進んでおり、一説では、今存在する職業の49%がAIに代替されうるという予測もあります。
その職業の中には販売などの接客業も含まれますが、人と接する業務の全てがAIに代替されるわけではないでしょう。そのひとつが、営業職です。AIによって強化される点はあるにしろ、営業は今後も人と人とのやりとりによってのみ成立するでしょう。
その理由は3つあります。
01.
AIの導入によって
人間の商談力がより上がるから
営業職の社員は、会議のスケジュール設定やメールの送受信などの雑務に追われることもしばしばあります。このような雑務をAIに任せることで、営業担当にとって最も大切な「取引」に時間を割くことができるようになります。
営業の取引に当たって一番重要なのは、タイミングを見計らうことです。
商談を持ちかけるのに一番適切な時期はいつか、AIとコンビネーションを組むことによってそのデータを割り出せます。そしてその準備に集中することで、商談の成功率を上げることができるでしょう。
02.
AIには収集できない情報を
人間は感じ取れるから
AIが人より勝る点は、膨大なデータを蓄積できるというところにあります。AIはあらゆるデータを集め、次に取るべき最善の行動を提案してくれるでしょう(営業電話をかけた後、その顧客に補足説明をするよう促すなど)。
例えばSalesforceのAI機能であるEinsteinは、メールやカレンダー等あらゆるデータを分析した上で、営業目標に基づいたアドバイスをします。顧客の感情変化を収集できた際には、次取るべきアクションまで提案してくれます。
しかし人の感情は、データのみから全てを読み解けるほど簡単なものではありません。優れた営業マンは空気を読むことに長けており、そこで感じたことをビジネスに活かしていきます。人間は、AIにはできないデータ収集をすることができるのです。
03.
感情の機微を読み取るのは
人間ならではのスキルだから
各関係者を取りまとめる営業は、取引の要です。一説では、ひとつの購買行動に対して平均6.8人もの人が関わっているとされています。その人たちを調整する営業担当の仕事は、非常に重要なのです。
巨額の購買を行うとき、買い手は売り手を信頼して意思決定を下します。売り手に会い、自分の不安や疑問を取り除いてもらうために質問を投げかけます。売り手はプロとして、自分の商品が安全で買うに値するものであることを相手に伝えなければなりません。その時に重要になるのは、信頼や共感といった定性的なことであり、これはAIの持てないものです。
AIは感情の機微を読み取ることはもちろん、ちょっとした言葉のニュアンスを理解することもできません。AmazonのAlexaやAppleのSiriは、あらかじめ設定されたスクリプトに依存しており、突飛な質問には答えられないこともしばしばです。
ここ数年で、より人間に近い存在になるよう、AIは大きな進歩を遂げてきました。しかし人間は、600年間進化を続けてきた複雑な生き物です。様々な感情の機微から生まれる数百万ドルの取引を管理するには、AIはまだまだ未発達と言って良いでしょう。
これが、営業という業種が簡単に機械によって代替されるものではないと考える理由です。