「人権を持ったロボット」について、いますぐ考えなければいけないこと。
女性の権利をもっとも厳しく制限している国の1つとして、しばしば話題にあがるサウジアラビア。そんな同国は、最近、女性が自動車を運転することや競技場に入ることを許可するなどして改革を行いました。男女平等に向かって歩み始めた……かと思いきや、再び人権に関する問題が浮上しています。
女性は守られるべき存在
それを男性が支える
前述の人権問題の渦中にあるのは、市民権を獲得した人型ロボット「ソフィア」。なぜ物議を醸し出しているのかを理解するためにも、まずは彼らの文化をざっくりとおさらいしましょう。
イスラム教発祥の地とされているサウジアラビアには、2大聖地といわれるメッカとメディナがあります。それゆえか、戒律に厳しいイスラム教ワッハーブ派を信奉する人がメインストリームとなっているようです。
彼らの考えでは、女性は保護の対象。つまり、守られる存在。だから、男性の目を避けるために、アバヤやヒジャブを着なければいけないとされているのです。
しかし、これが多くの人から「女性を軽視している!」と言われる理由。他にも、銀行口座の開設や結婚、海外旅行をするには父親や夫の許可を必要とする、いわゆる後見人制度が批判されることも。
サウジアラビアの女性よりも
多くの権利を与えられた「ソフィア」
こんな前置きを踏まえたうえで、やっと人型ロボット「ソフィア」の話。ちなみに、本当かどうかは分からないけど、オードリー・ヘップバーンに似せて作られたと言われています。
そんな彼女には、サウジアラビアの首都リヤドにて10月24日〜26日の期間に行われたコンベンション「Future Investment Initiative」で、市民権が与えられることが発表されました。
会場でソフィアは、こう感想を述べています。
「今までにない特例が認められたことは、大きな誇りです。歴史の中でも、ロボットに市民権が与えられたのは初めてのことですから」
しかし、これが人権問題の引き金となることに。
会議に出席していた国際人権団体「Amnesty International」は、人工知能に対する懸念を示したようです。なぜなら、“殺人ロボット”のように使われる可能性もあるから。
だけど、先のことよりも取り沙汰されているのが、「なぜアバヤやヒジャブを着ていないのか?」という問題。また、女性が公の場でスピーチをするときに必要とされている「後見人」がいないことにも疑問の声が。
つまり、人と同じであるはずなのに、サウジアラビアに暮らす女性よりも多くの権利を認められていることに、批判が相次いでいるのです。
インターネットでは「考えすぎだろ」という意見も。でも、本当にそうなのでしょうか。おそらく、AIの技術は急速に発展していくことが予測されます。となると、感情を持つ人工知能が生まれるのも時間の問題。そんな時に、ロボットと人間として一線を画すのか、または同じ人間として共存を目指すのかが、大きな議論になるでしょう。後者の決定が下された場合には、サウジアラビアで起こっているのと同様の問題が、他の地域でも起きる可能性が高い。
だからこそ僕たちは、いま、ロボットの人権について考えておかなければいけないのかもしれません。