色とキャラクターの相関関係(ディズニー編)
アラジン、ピノキオ、アリエル、ニモ…。ディズニーには、じつにたくさんのキャラが登場しますが、そこに「色による明確な区分がある」と、説くのはライターSara Mcguire。彼女の長〜い考察、一読の価値ありです。
統計から分析される
色とキャラクターの関係
キャラクターを見た時、私たちはどのように善悪を区別しているのでしょうか?おそらくは、キャラクターデザインが関係していることでしょう。
あなたが思い浮かべたキャラクターには、どんな色が使われているか思い出してみましょう。悪役には「黒い」帽子がピッタリですね。英語では“緑の嫉妬心”というものがあり、妬みや嫉妬などが表現の1つになっています。
マーケティングやブランド戦略となると、色の関連性についての議論をよく耳にします。色が私たちのムードや、購買意欲にどのように影響するのかについて書いた記事は多くあります。でもほとんどの記事は、そのまま鵜呑みにしてはいけないものでしょうが。
「HelpScout」に掲載された色彩心理学の記事によると、私たちの色のとらえ方は個人的な経験や、育ってきた文化的背景、そして個人の好みが大きく影響するそうです。しかし、性格や個性などのとらえ方に関しては、色が関係してくるというのも確かです。だって、頭の中で悪役を想像する時、ピンク色の洋服は着ていませんよね?
人の性格と色との関係についてさらなる研究をしようと思った結果、私たちの誰もが親しみを持っているディズニーキャラクターたちについて分析することにしました。
大勢の人がディズニーキャラと共に育ちました。どんなイメージが「ヒーロー」で、どんなイメージが「悪者」なのか、私たちの理解に訴えかけます。統計の結果、私たちは「色」と「キャラクターの性格」の関係を発見することができました。
悪役とヒーローを
区別する色とは?
皆が好きな話題の視覚的データを作るのが得意なVenngageでは、ディズニーのキャラクターデザインに使用される主な色と、そのキャラクターの「善」「悪」との関係を調べることにしました。
調査を進めるにあたり、ディズニーの悪役の多くは黒や紫といった、暗い色が主に使われているのは分かっていました。しかし、私たちが気になったのはヒーローに使用される主な色が、物語の中でどのような性格を描写しているのか、ということでした。
さらに、ディズニーの悪役デザインに使用される色がそのキャラクターの好感度(悪の一味であるかどうかにかかわらず)にどのように影響するのかを知りたいとも思いました。
まずは、そのために、ディズニーのヒーロー40人、悪役40人を選び抜きました。
次に、大きな円で構成されたインフォグラフィックには、ディズニーのキャラクター44人(ヒーロー22人、悪役22人)をランダムにピックアップしました。小規模サンプルでの色彩分布と、大規模サンプルの結果とは酷似していました。
また、善を+10、悪を-10として、それぞれのキャラクターを測り順位をつけました。道徳的にあいまいである場合は0。順位は「ヒーロー」としての素質(やさしさ、勇敢さ、共感度)、そして「悪役」としての素質(残酷さ、貪欲さ、復讐心)に基づいています。
面白いのは、ヒーローだと思われているキャラクターでも、貪欲さや復讐心といった悪役の素質を持っている場合があるということです。そういう場合は、ヒーローの素質の多いキャラクターよりも低いランキングにしました。
注意:今回のランキングではヒーローと悪役というグループに基づいていますが、結局のところは私たちがキャラクターをどう理解しているか、ということが大切。また、一部のキャラクターについては、ちょっと大げさに扱った部分もあるかもしれません。でもそれだって、楽しみの1つですよね?
ここに、キャラクターの「色」と「善悪の順位」をまとめています。
驚くような結果ではなかった部分もあります。「悪役」の多くは、紫や黒などといった暗い色を主に使用したデザイン、というのは予想通り。それと同時に、黄色やオレンジといった明るい晴れやかな色は「ヒーロー」に使用されていました。
その中で最も興味深かったのは、好感度の高い悪役にはヒーローの素質と関連づけられる色が使用されていたということ。また一方で、善であるヒーローでも道徳的なあいまいさがある場合には、「ヒーロー」よりも「悪役」的な色が使われているということでした。
-紫-
権力・崇高さ・贅沢・野望
予想していた通り、紫は圧倒的に悪役の色でした。紫が権力や崇高さ、贅沢、野望などと関連づけられていることを考えれば、当然のことでしょう。
この特徴は特に、『眠れる森の美女』に登場するマレフィセント、『プリンセスと魔法のキス』に登場するドクター・ファシリエ、『白雪姫と7人のこびと』に登場する魔女の女王にみられます。どのキャラクターも、権力を欲しています。
しかし、興味深いことに、こういった特徴はヒーローたちにもみられたのです。アラジンのデザインは紫を主にしています。そう、アラジンは間違いなく野望を抱く青年です。
『アナと雪の女王』に登場するアナもまた、主に紫を用いたデザインに。アナは紫の持つ悪役の素質は一つも持ち合わせていませんが、名誉ある家の出身。デザインに使用されている主色に、青が含まれていることも見逃せません。青は多くのヒーローに使用される色だからです。アナのキャラクターに見られる矛盾は面白いとは思いませんか?
-青-
信頼・忠誠・自信・安定
青は圧倒的なヒーロー色です。信頼、忠誠、自信、そして安定といった特徴を持っている青は、ヒーローにぴったりです。
青には絶対に否定できない「良い」キャラクターがいます。『ズートピア』のジュディ・ホップス、『モンスターズ・インク』の“サリー”ことジェームズ・P・サリバン、そして、シンデレラ。しかし中には、悪役がヒーローになったケースもあります。例えば、『アナと雪の女王』のエルサや、『リロ・アンド・スティッチ』のスティッチなどです。
また、デザインの主色に青を使った悪役たちはみな、好感度の高いキャラクターであったことも分かりました。例えば、『ヘラクレス』のハデス。間違いようのない悪役(裏社会の神様ですから)ですが、おちゃらけキャラでもあります。『ファインディング・ニモ』のダーラ・シャーマンは、まあ、子どもですけれども。
-赤-
決断力・情熱
ヒーローに赤いマントはつきものですが、赤が悪役のデザインによく使われているのには驚きました。
しかし、赤という色が決断力や情熱とよく結びつけられることを考えれば、ヒーローにも悪役にもなり得るのは当然なのかも。『ピーターパン』のフック船長や『アラジン』のジャファーが強い意志を持ち合わせているのは確かです。
ヒーローについていえば、『Mr.インクレディブル』のMr.インクレディブルや、『ビッグ・ヒーロー・シックス』のヒロ・ハマダのように、赤色のデザインを持つキャラクターには、私たちが昔からイメージする典型的な「ヒーロー」の特徴がみられます。
-緑-
成長・癒し・安全
緑はよく成長や癒し、安全などと結ばれています。だからこそ、ヒーローのデザインに緑が使われるのは当然のこと。
デザインの主色に緑を使用しているヒーローは、物語を通して成長を遂げるキャラクターが多いようです。例えば、『メリダとおそろしの森』のメリダは、母親と張り詰めた関係を持つ頑固な少女でした。しかし、映画の終盤にかけて、メリダは母の視点からモノゴトを見ることができるようになり、違いを乗り越えることができるようになります。
または、恐れ知らずの戦士の許嫁から成長するムーラン。『リトルマーメイド』のアリエルは海を離れ自分の2本の足で歩き、憧れていた人生を手にします。
-黄色-
純粋・無垢
黄色のキャラクターは、ほとんどが純粋によいキャラクターばかりでした。ポカホンタス、『カールじいさんの空飛ぶ家』のラッセル、白雪姫、『美女と野獣』のベル。彼らのデザインには黄色が多く使われています。
例外は、ピノキオ。ナイーブで無垢なキャラクターですが、ウソつきの癖があります。ピノキオのデザインには少し赤が使用されているので、もしかしたらこれは「悪」の象徴なのかもしれません。
-オレンジ-
ヒーロー・陽気
黄色と同じく、オレンジもまた明るく、晴れやかな色です。お察しの通り、『ファインディング・ニモ』のニモをはじめとして、ディズニーのヒーローの多くにはオレンジが使われています。
ディズニーの悪役でオレンジ色を主に使っているのは『ジャングル・ブック』のシア・カーンです。しかし、シア・カーンはトラなので、この場合に色の持つ意味を語るのは少々かけ離れすぎだと思います。とはいうものの、オレンジは自分勝手で日和見主義な部分がありますので、推測にお任せします。
-黒-
悪役
分かっていたとは思いますが、主色に黒を用いたキャラクターの全てが悪役でした。『ライオンキング』のスカー、『リトル・マーメイド』のアースラ、『ビッグ・ヒーロー・シックス』のヨーカイのように、最も悪いとされた悪役もいました。
しかし、スカーやアースラには実際、何も取り柄となる特徴が無かったのに比べ、ヨーカイはより複雑なキャラクターです。ヨーカイの印象的な特徴といえば、白い仮面です。これはある意味、キャラクターデザインの矛盾といったところでしょうか。
-白-
無垢・やさしさ
私たちの推測とは裏腹に、白は悪役もヒーローも同じように使用されていました。もちろん中には、主色に白を用いたデザインを持つ絶対的なヒーローもいます。例えば、『おしゃれチャット』のダッチェスや、『101匹わんちゃん』のポンゴなどです。白の定番的な印象である「無垢」や優しさという特徴がぴったりのキャラクターです。
ここで興味深かったのは、白をデザインの主色に用いた悪役なのです。
例えば『ズートピア』のベルウェザー。はじめ私たちは、ベルウェザーは優しくてドジばかりしているキャラクターだと信じ込んでしまいますが、実は羊の皮を被った狼だったのです。または、『ウォーリー』のオートなど。悪役として役づけされていて、道徳のかけらもありません。
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「色」と「キャラクター」の関係性って面白いですよね。ディズニーの世界には「色」が緻密に計算されていて、それぞれ意味を持ち、記号として機能しているというのは、意外でした。