カミソリでセーターをやぶった私が洋服ブラシを買いました in 浅草

これ、私物です。
写真を撮った時点ではまだ使ってなかったので、新品。ちなみにこれは、洋服ブラシと毛玉取りブラシだ。

実は、洋服ブラシも毛玉取りブラシも、今回初めて買った。そのきっかけは、今年の初めに経験した、ある出来事だった。

ある金曜日の夜のこと...

翌日の友達とのランチに着ていこうと、ニットセーターを床に広げたところで、毛玉が気になった。それで、まずは台所に行った。

よく知られている毛玉取りの裏ワザは、おそらく2パターンあると思う。

ひとつめ、食器用スポンジの硬い面でやさしくなでる。
けれど、台所に行った私は「しまった」と思った。さっき食器を洗ったばかりで濡れていたのだ。毛玉取りのために新しいスポンジをおろすのは……と思った私は、次に洗面台へ行った。

これが、ふたつめ。カミソリで軽くこする。
本当はT字がいいのだけど、目につくところにI字のものしかなかったものだから、それを手にとって部屋に戻った。

毛玉取りという作業は実に単調だ。手を動かすだけ。
最初は慎重にやっていたものの、だんだん面倒くさくなり、飽きてきて、集中力が途切れた——まさにその瞬間。

セーターを、カミソリで見事に引っかいてしまったのだ。

で、問題は何だったのかというと、なんだかすごく絶望してしまったのである。「私、何やってんだろ...」と、しばらくぼーっとしたまま動かなかった。

それは別に、特別思い入れのあるセーターでもなかった。高いものでもなかったし、代わりに着ていく服なんていくらでもあった。だけどそこには、単にセーターを傷めてしまった、という事実以上の何かがあったのだ。

そこから季節はすぐに暖かくなり、私はその虚しい記憶を心のどこかで寝かせたまま、時を過ごした。

そして、季節は秋になり、もうすぐ冬になる。
この前知人と渋谷を歩いていると、「冬の匂いがするね」と言われた。なんとなく、ああ、と思った。そしてちょうどその日、D&DEPARTMENT PROJECT TOKYOのFacebookで、偶然これを見つけたのだ。

ブラシ一筋 103年

この商品を作っているのは、1914年創業の浅草アートブラシ社。時代、そして人々のライフスタイルに合わせた商品の開発・改良を心がけ、ものづくりのまち・浅草で、ブラシ一筋でやってきた。

毛玉取りブラシが開発されたのは、今から約15年前。もとはクリーニング店に卸すためのものだったが、一般の方が家庭でも使いやすいようにと改良された。使用されている毛は猪毛で、毛先をT字に加工することにより、小さな毛玉をしっかりキャッチしながらも衣類を傷めることなく使うことができる。ちなみにこの特殊加工は企業秘密で、特許をとっているのだそう。これまでに累計45万本を売り上げたという人気商品だ。

洋服ブラシは、浅草アートブラシのベーシックかつスタンダードな商品。一般的な洋服ブラシと違い、毛先が密集するように植毛されていることから、ブラシが衣類に当たる面積が広くなり、衣類についたホコリなどを払いやすい作りになっている。

一生 使っていける

「ブラシってどれくらいもつものなんですか?」。購入時、販売担当の菊地さんに尋ねると「もちろん使用頻度にもよりますけれど、大切に使ったら、きっと一生使っていただけると思います」と返してくれた。私はその返事に、なぜかとても幸せな気持ちになった。

そして、撮影が終わって、ブラシを持って帰って、実際に家で使ってみた。
カミソリやスポンジより使い心地がいいのなんてもちろん当たり前。だけど、そこには、もうセーターを傷めなくていいという事実以上の何かがあった。

これからずっと、大切に使っていきたいと思います。

Photo by Nao Shimizu
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。