「浅草(あさくさ)」にあるのに「浅草(せんそう)寺」のワケ

何気ない一日に思えるような日が、世界のどこかでは特別な記念日だったり、大切な一日だったりするものです。

それを知ることが、もしかしたら何かの役に立つかもしれない。何かを始めるきっかけを与えてくれるかもしれない……。

アナタの何気ない今日という一日に、新しい意味や価値を与えてくれる。そんな世界のどこかの「今日」を探訪してみませんか?

浅草仲見世記念日

今日12月27日は、東京、そして日本を代表する有名&人気の観光スポットのひとつ「浅草(あさくさ)仲見世商店街」が、1885年に近代的な煉瓦造りに装いを一新したことを記念する「浅草仲見世記念日」です。

“日本最古の商店街”のひとつに数えられるこの商店街の発祥は、江戸時代までさかのぼります。

江戸に幕府が開かれたことで、浅草(せんそう)寺の参拝客が急増。境内の清掃をはじめとする労役に従事する地元の人々に対し、徳川将軍家が参道への出店営業許可を出したのがはじまりなのだとか。

1923年9月に発生した関東大震災で壊滅的な被害を受けるも、2年後、現在のような朱塗りの造りになって奇跡の大復活。が、1945年、東京大空襲によって、そのすべてが焼失してしまう事態に......。

しかし、そこはさすが義理と人情の街・浅草。地域や関係者らの互助が実り、三度の再起を実現させ、現在の仲見世通りの原型が完成したのだとか。

じつに波乱に満ちた道程を歩んできた浅草の仲見世ですが......さて、ここまでで紹介した内容に、どこか違和感を感じた人はいませんか?

強調のために不要とも思える“ルビ”を振っているのですが、地域を表す場合は「浅草」を「あさくさ」と読むのに対し、「浅草寺」は「あさくさじ(でら)」ではなく「せんそうじ」と呼びますよね? 

その理由、知っていますか?

じつは、意外にシンプルな理由ではあるのですが、それは──“お寺”だから。

お寺とは、そもそも仏を祀っている仏教由来の場所であり、その信仰は中国経由で日本にわたってきました。中国から日本に渡来したものといえば、もうひとつ代表的なものに“漢字”が挙げられますが、中国語の発音に基づく読み方は“音読み”です。

つまり、お寺(仏教)と漢字が共に中国由来のものであることが、「浅草寺」を「あさくさでら」ではなく「せんそうじ」と読む理由なのです(※)。

それを裏付けるように、日本固有のさまざまな神を祀る「神社」は“訓読み”で表される場合が多く、浅草寺と直線距離でわずか50mほどの距離にある「浅草神社」の読みは「せんそう」ではなく「あさくさ」となっています。

間もなくやってくる大晦日、そして新年。

その時期、かつてであれば、多くの参拝者や観光客で賑わう浅草寺と仲見世がどんな様子になるのかはわかりませんが、そこを訪れる多くの人の願いは、きっと同じもののはず。

日々を不安なく、健やかに過ごせるときが、一日でも早く戻ってきますように──。

※例外もあり。

Top image: © GOD_Cat/Shutterstock.com
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