消えない「過去のキズ」に、色鮮やかなタトゥーを彫る男。
タトゥーはただのアートではなく、過去の傷をも覆い隠してくれて、未来に向けて一歩を踏み出そうとする人の背中を押してくれるものでもあると気づくことができたストーリーがある。
Ryan Kellyさんは、他の彫り師が断ることもある、“曰く付き”の客を対象に、無償でタトゥーを彫っている。
消えない傷跡に苦しむ
少女を助けるために…
上の写真に写っているのは、Ryanさんを尋ねてきた少女Aoifeさんの腕。左はタトゥーを入れる前のもので、過去におこなった自傷行為の傷跡が多数残っている。そして、右はRyanさんがタトゥーを彫ったあとの写真。
精神的に辛い時期を過ごしたことがあるというAoifeさん。今は、すこしでも前へ進もうとしている。けれど、どれだけ前向きに未来を見据えようとしても、腕に残っている傷跡が気になっていたという。
「自傷行為をやめて数年になるのに、傷跡を見るたびに毎日思い出さなきゃいけなくてとても辛いです」
「Ryanは、醜いものに美しいものを被せるということをして、前に進もうとする人たちの背中を押しています。タトゥーをいれてもらうことで、自由になった感覚や自信を取り戻すことができるのです。半袖を着ていようものなら、チラチラ見られて質問されることが多く、仕事もしにくいですからね」
と、「Independent」に語っている。
苦しむ人をタトゥーで救う
前述したとおり、AoifeさんはRyanさんに出会うまで、傷跡にタトゥーをいれることを他の彫り師から断られてきたという。通常よりも工数がかかったり、高い技術を問われることになるからかもしれない。
しかし、Ryanさんはどうして彼女を受け入れたのだろう?
実は彼、過去にもAoifeさんと同じような悩みを持つ少女にタトゥーを入れたことがあるのだという。その経験から、自らのタトゥー技術を他にも苦しんでいる人たちのために役立てたいと思いはじめ、「Scars Behind Beauty」というプロジェクトを立ち上げたということ。Aoifeさんも、このプロジェクトの存在を知ってRyanさんのもとを訪れたようで。
プロジェクトでは現在、毎週1人を対象に、無償でタトゥーを入れているという。
自分が持っているスキルで誰かを救う時、それはRyanさんのようにタトゥーという場合もあるのだ。今後も彼の手によって、多くの人が笑顔になっていくことを願う。