日本人のほとんどが知らない、米・マリファナビジネス最前線(前篇)
「火をつけて この胸に お前の匂いを かぎたいぜ」
故忌野清志郎さん率いる覆面バンド、THE TIMERSが1898年にリリースした『タイマーズのテーマ』は、大麻を連想させるセンセーショナルな歌詞でロックファンの心を捉えた。
ただし、この歌を現代の日本のTVで歌うことは叶わないだろう。大麻と口にするだけで白い目で見られる。
何が悪くて禁止されているのか。我々日本人は大麻について何も知らない。清志郎さんが生きていたら教えてくれただろうか。
税収は100億円以上で
公共サービスに還元される
対してアメリカでは、年々大麻の合法化が広がっている。
2014年、コロラド州がアメリカ初の大麻合法化に踏み込んで以降、その流れは西海岸へも広がり、ワシントン州、オレゴン州、カリフォルニア州で相次いで解禁された。現在は、首都ワシントンD.C.および8つの州で娯楽用大麻の使用が許可されている。
「Pew Research Center」の調査では、アメリカ国民の61%が大麻は合法化されるべきと答えている。8つの州以外でも娯楽用大麻の解禁は進むだろう。
これは結果的に、ブラックマーケット撲滅と大麻の健全な使用にもつながる。そして何より企業や個人にとってのビジネス機会を創出し、ひいては自治体の収入源増加に貢献する。
2016年に大麻を合法化したオレゴン州政府は、ディスペンサリーと呼ばれるマリファナ販売店に17%の税を課している。
さらに各市・郡は3%まで課税することができる。つまり最大20%の税が大麻商品に課されることになる。日本の消費税が8%だと考えると、いかに高いかがわかるだろう。
ちなみに、2017年のオレゴン州では大麻による税収が100億円以上(850万ドル)もあった。同州はこれを学校教育や警察機関、リハビリ施設運営などの公共サービスに充てている。
当たり前になりつつある
「大麻ビジネス」
単に大麻ビジネスとっていても幅が広い。
前述したディスペンサリーは小売。さらに栽培業者、大麻版の車検検査を行うテスト業者、ディストリビューターと様々である。
これらはすべて認可制であるため、合法化された各州、各市では毎年数社ずつ選定している。苗の栽培に特化する人もいれば、これらの全ての運営に踏み込む企業もある。
テクノロジー業界も大麻ビジネスに参画している。大麻に関わる情報を地図を元に提供する「Weedmaps」、大麻版アマゾン「Leafly」、大麻ビジネス版セールスフォース「Baker」、大麻版UberEATS「Eaze」、大麻に関するメディア兼ソーシャルネットワーク「MassRoots」など。テクノロジーを利用した大麻スタートアップの出現は後を絶たない。
それもそのはず、まだいくつかの州でしか合法化されていなかった2016年に、すでに北アメリカ大陸の大麻ビジネス市場は約7300億円(67億ドル)に達していのだ。合法化の流れはこれからも続き、使用はよりカジュアルになるため、市場はさらに大きくなることが見込まれている。