ゴールデンウィーク「JR新宿駅で途中下車」のススメ
新宿の人通りは相変わらず多い。電車を降りたら、ミライナタワー改札を出て、NEWoMan(ニュウマン)の5階へ向かおう。目的地は、LUMINE 0(ルミネゼロ)。
ナイキやリーバイスとのコラボで知られるアーティスト、松山 智一(まつやま ともかず)さんが、日本で10年ぶりとなる個展「Same Same, Different」を開催中だ。NYの現代アート界はシビアだという。だからこそ、松山さんの言葉は痛快だ。
『Save Me and Get Yours』
「黄色い肌の人が、アートって文脈の中に入るのは本当に難しいんですよ。倍の成果を出さなければならない。草間さんや、奈良さん、村上さんは、それをやり遂げた人。
ぼくのアーティスト論は……なんて言ってる人を見ると、それは人が言うことだ、と思うんです。カウズは喋らないでしょう? 作品が喋るんです。そういう感覚はNYにいるとビンビン感じますよ」
日本とアメリカを行き来しながら幼少期を過ごし、どちらの国でもアウトサイダーだった松山さんの作品は、ノマド生活に必要だった調整感覚から磨かれた、ミックスカルチャーへの視点が刺激的だ。
そこには、世代的に感じてきたパンクやテクノ、ヒップホップといった、楽器を演奏しなくていいサンプリングやカットアンドペーストで繋ぐ音楽的なアプローチも含まれる。いろいろな時代、場所、美術史からカルチャーを寄せ集め、自分のものになるまでエディットする。
『If I Had You, Is It Gone』
狩野派の大和絵、江戸明治時代の浮世絵、NYで生まれた抽象絵画、ポップアート、フランス近代絵画、ファッション誌の切り抜き、ファッショントレンド、伝統的な着物柄、ネットにあるライセンスフリーのデザインなど、イメージを融合させオリジナルに消化されるまでリミックス=再構築をしたシリーズのほか、どれもアトラクションを体験しにきたかのようなパワーを感じる作品ばかり。
日常のなかにある機能美だった日本美術としての身近さと、専門家が見ても納得する説得力、それらをわかってもらうために、JR新宿駅から直結する施設で展示することには意味がある、と松山さんは言っていた。
「スペースとして大きいものが飾れるという条件もありますが、とにかく交通量が多い新宿駅という場所が重要でした。美術館は目的地化していて結構な労力がかかる。あそこに行こうと言って行くのではないアクセスしやすさが大きな魅力でした。話をもらった時に、ああすぐやろうって、決めましたね」
松山さんは、アジア人で唯一、スヌーピーが活躍するマンガ『ピーナッツ』の世界観を伝えるために始まったアートプロジェクト、ピーナッツ・グローバル・アーティスト・コレクティブにも選出された。
展示会場はゆっくりと現代アート鑑賞を楽しめる広々とした空間が広がっている。3日からは、ゲストを迎えたトークイベントも開催される。会期は5月6日(日)まで。このGWに東京にいるのであれば、ぜひ立ち寄ってみてほしい。
入口では作品集が当たるスクラッチも配られているので、忘れずに。作品詳細については、松山 智一作品が日本で唯一直接購入できるギャラリー「WALLS TOKYO」もチェックしておこう。