ドイツに住んでみて驚いた。日本人との「時間の過ごし方」の違い

ドイツに引っ越して来てから、「ボードゲームやるから遊びに来ない?」と誘われることが多くなった。

親戚の集まりでボードゲーム。友だちとボードゲーム。飲みながらボードゲーム(麻雀の感覚に近いのだろうか)。子どもともボードゲーム。

ドイツ人は「三人寄ればボードゲーム」だ。

各自いろいろなゲームを持っているので、新しいボードゲームにもよく出合う。20分ほどで終わるシンプルなものや、数回かけて遊ぶシリーズもの。簡単なカードゲームや2,000以上のトークンを使う超大作。対戦タイプもあれば、協力プレイタイプもある。

とにかくびっくりするほど多様性に富んでいて、目うつりしてしまう。

ボードゲーム大国、ドイツ

ドイツ ボードゲーム

街中でボードゲームに出合うことも多い。ボードゲーム専門店やおもちゃ屋さん、デパートはもちろん、ときには本屋さんやバーにも並んでいる。

たまたま自分の周りにボードゲーム好きが多いのか? と思ったがそうでもないらしい。

ドイツ人1,024人を対象に行われたある調査では、62パーセントが「よく」または「たまに」ボードゲームで遊ぶと回答している

ボードゲームは親子のコミュニケーション手段としても人気で、親がボードゲームにかけるお金は年平均64ユーロ(約8,700円)というデータもあるくらいだ。

64ユーロというと、年に1、2個新しいボードゲームを買っている計算。子どもは親が毎年買い足していくボードゲームに囲まれながら成長していくのだろう(そういえばある友だちは、帰省する度に実家から古いボードゲームを持ち帰ってくる)。

ドイツがボードゲーム大国なのは、市場としてだけではない。この国はゲームをつくるのも得意らしい。ドイツ発のボードゲームは世界中で人気で、日本のボードゲーマーからの注目度も高い。

ボードゲームの総合情報サイト『ボドゲーマ』の総合ランキングをみてみると、上位5タイトルのうち3タイトルがドイツ発のゲームだ(2018年5月2日時点「おすすめボードゲーム」より)。

また毎年夏には「ドイツ年間ゲーム大賞/Spiel des Jahres」が発表され、秋には世界最大のボードゲーム見本市「Spiel Essen」が開催される。

ドイツ ボードゲーム

ドイツ発のボードゲーム流行のきっかけになった『カタンの開拓者たち』も、1995年にSpiel des Jahresで大賞を受賞している。

そもそも、なぜドイツ?

ドイツ ボードゲーム

それにしても、なぜドイツはボードゲーム大国になったのだろう。興味がわいて、『EUROGAMES: The Design, Culture and Play of Modern European Board Games』(スチュワート・ウッズ著)を開いてみた。

ウッズが最大の理由のひとつと書いているのが、メディアでのプレゼンスの高さだ。

昔からドイツでは、ボードゲームがラジオで批評され、ボードゲームの製作者たちが最新作とともにテレビに出演し、新聞ではコラムが掲載され、専門誌も多く発行されていたという。いまは休刊してしまったものも含め、たしかにボードゲームメディアにはドイツ語のものが多い

「ドイツ年間ゲーム大賞」はそんなメディアのボードゲームへの態度が生んだ賞だ。賞の設立はいまからちょうど40年前の1978年。 ボードゲーム専門ジャーナリストが「文化財としてのボードゲームを広め、家族や友だちとボードゲームで遊ぶことを奨励し、ボードゲームの選択肢が数多くあるなかでの指針を与える」目的でつくられたという。審査は絶対中立。直接ボードゲーム産業にかかわっている人間は審査員になれない、という決まりがある。

入賞しても賞金は出ないが、受賞者はライセンスを払うことでパッケージに「ドイツ年間ゲーム大賞受賞」というエンブレムを使用できるようになる。このエンブレムはゲームの著者にとって勲章のようなもの。

こうしたメディアからの注目や賞によってボードゲームは身近なものになり、カルチャーの一部、そして音楽や本、映画同様に専門家からの批評の対象にもなった。

ちなみに、同書ではドイツがボードゲームの一大生産国になった理由として、14世紀から続くおもちゃづくりの文化がボードゲームに受け継がれていること(世界最大の玩具見本市が開かれるのも、ドイツのニュルンベルクだ)や第二次世界大戦の影響などが紹介されているが、今回は省略する。

「Spieleabend」という時間の使い方

個人的には、「ボードゲームのための時間をとる」ことが自然になされていることに驚いた。

仕事から帰ってきた親が子どもとボードゲームをしたり、大学生がカレンダーに「Spieleabend」(ゲームナイト。数人で集まってボードゲームをすること)と書き込んでいるところを目にすると、日本との時間の使い方の違いを感じる。それだけボードゲームが、余暇の過ごし方のひとつとして定着しているということなのだろう。

ドイツ ボードゲーム

日本でも注目を浴びはじめたボードゲーム

とはいえ、日本でもアナログゲームはじわじわと注目を集めているらしい。

ボードゲームカフェは日本全国に約300店舗あり、その数はどんどん増えている。ボードゲームを置いている図書館もちらほらでてきているらしい。

最近では、従業員同士の交流促進や企業文化の醸成のために、社内に260個超のタイトルを揃えた従業員向けのボードゲームカフェを設立した企業もあるという。

いままでコンソールやPCなどデジタルゲームばかりやってきたが、ボードゲームも遊び始めると結構ハマるものだ。初対面の人と仲良くなるには格好の小道具だし、ちょっと落ち込んでいるときに友だちと遊んだりすると、その時間はゲームで頭がいっぱいになって気分転換にもなる。

何よりも、友だちの普段は見られない一面が見れるのが面白い。いつもはクールな友達が毎ターン一喜一憂している姿をみると、負かしてやろうとつい本気になってしまう。

Reference: SPLENDID RESEARCH, ボドゲーマ, Eurogames: The Design, Culture and Play of Modern European Board Games

関連する記事

「ドイツに来てからボードゲームに誘われることが多くなった」という記事を前に書きましたが、ありがたいことにもうひとつお誘いが増えたものがあります。そう、誕生...
新作から定番まで、5つの日常的なシーンに対して、日本最大級のボードゲーム専門店「すごろくや」に紹介してもらった「おすすめボードゲーム15選」のまとめ。
日本最大級のボードゲーム専門店「すごろくや」に、友だちとお酒を飲みながら楽しめる「おすすめボードゲーム」を3つ紹介してもらいました。
つい先日、世界各地の1ドルで飲めるビールの量を公開されました。
日本初のグランピングリゾート「星のや富士」が、今月4月26日(月)~今夏8月31日(火)までウェルネスプログラム 「樹海リトリート」を提供。
7月19日にMoritz Fiegeを製造するブルワリーが、新しいボトルを購入しているけど生産が追いつかないため空き瓶を返却して欲しいと、Facebook...
日本最大級のボードゲーム専門店「すごろくや」に、パートナーと一緒にカップルでやる意味のある「おすすめボードゲーム」を3つ紹介してもらいました。
日本最大級のボードゲーム専門店「すごろくや」に、誰とでも仲良くなれる「おすすめボードゲーム」を3つ紹介してもらいました。
ペット先進国として知られるドイツ。そんなドイツで「飼い主は1日2回以上、犬を散歩させること」を義務付ける、驚きの法案が提出された。
日本最大級のボードゲーム専門店「すごろくや」に、アルコールは要らないと思えるほど熱中できる「おすすめボードゲーム」を3つ紹介してもらいました。
ヨーロッパで広く愛されているトルコ発のレジャーブランド「aniva」から、コンパクトで手軽、かつ本格的なバーベキューが楽しめる「コンパクトバーベキュースタ...
日本最大級のボードゲーム専門店「すごろくや」に、一度やったらヤメられない中毒的な「おすすめボードゲーム」を3つ紹介してもらいました。
ドイツ・べルルで、チョコレート工場から大量のチョコレートが流出。流出した量はなんと1トン。真冬の冷たいコンクリートの上ですぐに固まり、まるで道路に張り付く...
ドイツの化粧品会社「Beiersdorf」のブランド「NIVEA(ニベア)」が、シャワージェルの「リフィルステーション」の運用実験を開始。実験は8〜10ヵ...
文化や慣習が違えば、仕事の進め方だって異なる。海外で働くには、その国の国民性を理解することが大切と言われます。フランクフルト在住のHisai Toruさん...
ドイツのスタートアップ「holoride」が開発したのは、クルマの中でプレイするためのVRゲーム。ただ仮想現実を体感させるだけでなく、曲がったり止まったり...
ドイツで100年の歴史を誇るオーガニックハーブ&スパイスブランド「Herbaria」が日本で手軽に買えるようになる。
1919年、ドイツに設立された美術学校「バウハウス」。あれから100周年を迎える今年、同校を記念して造られたバスが登場。中ではワークショップやエキシビショ...
おそらく、多くの日本人がそう考えているのではないだろうか?実際にドイツ人は仕事における生産性がとても高いことで知られている。OECDのデータによると、20...
コロコロ変わる4月の天気にやられてか、私は風邪をひいた。日本から最低限の薬は持ってきていたが、冬の乾燥で何度か風邪をひき、もうストックもない。そんなわけで...

おすすめ記事

米国にできた最新の「7-Eleven Evolution」で夢のような宿泊プランが企画中。快適なラウンジシートや「プレイステーション 5」が用意されている...
大分県の景勝地、耶馬渓に3日間限定でが「耶馬溪トンネルホテル」がオープン。客室となるのは道路に設置されたキャンピングカー。トンネル内には、建築家・佐野文彦...
浜松市の鉄工所がつくったジュラルミン仕様のペグ。強度はもちろん、らせん形状に秘密あり。
NBAの「ロサンゼルス・レイカーズ」に所属している選手、アンソニー・デイビスが着用し話題となっていた「ナイキ」のサステイナブルな新作バスケットボールシュー...
「Goldwin」の2021年春夏シーズンのコレクションがローンチ。
今月1日、「帝国ホテル東京」がホテル内での「サービスアパートメント」をローンチ。3月15日からの入居開始に先駆け、現在、予約を受付中だ。
たとえ、誰からも理解されなくても、認められなくたって、コツコツとひたむきにひとつゴトに取り組んできた人々。人生の多くの時間を費やしてきた「愛すべきバカヤロ...
Giuseppe Colarusso氏の作品『IMPROBABILITA’』シリーズは、あれ?これってあり得ないよね…という、ありそうで非現実的なものばか...
ユーザーから買取りしたイケアの家具や展示品の購入などができるスペース「Circular Hub」が今月13日からIKEA港北に登場。
シンプルなアイデアですが、予想以上の人気っぷりで、クリスマスまでのストックが既になくなっているこちらのチョコレート。ホットミルクの中に入れると、中から出て...