浜松のKAGIYAビルに潜入。“ウワサの” 本屋と喫茶店へ(前編)

外見は普通の雑居ビル。でも中身は、新しいカルチャーの発信地。丸八不動産が手がける「KAGIYAビル」は、静岡のJR浜松駅から徒歩10分のところにある、浜松観光ではおさえておくべきスポットです。

築50年以上で空き室だらけだったこのビルは、2012年10月に "ショップ&ワーキングスペース" へとリボーン。今では全テナントが満室になり、全国からお客さんが訪れるビルになったそうです。

そんなKAGIYAビルの魅力を、前編と後編の2本立てで紹介します。

現在、4階建てのKAGIYAビルには、12店舗が入っています。なかでも、浜松旅行の始めに立ち寄りたいのは「BOOKS AND PRINTS」と「喫茶 さくらんぼ」の2店。駅前の観光案内所やガイドブックで知るのとはひと味ちがう、ディープな浜松を知ることができますよ。

新しいカタチの観光案内所
「BOOKS AND PRINTS」

©2018 TABI LABO

あれ……ん?

KAGIYAビルの2階で、戸惑いました。「BOOKS AND PRINTS」の本棚は、一見なんの “脈略” もないのです。建築コーナーかと思ったらその横にアメリカ文学が並んでいたり。よくわからない。店長の新村亮さん、どうして?

「知らない本に、たまたま出会って欲しいと思って」

つまり、脈略がないのは “あえて” 。それまで知らなかった新しい本に出会える本棚にしていて、お客さんが何度もお店を訪れたくなるきっかけづくりをしたかったそうです。

大型書店にはあまり置いてなさそうな本も並びます。特にデザインやアートに関する本が豊富。近くに静岡文化芸術大学もあるので、それらを目当てに訪れる学生さんも多いとか。

ここでしか飲めないオリジナルブレンドコーヒー(250円)は、コラボしている静岡市の「IFNi ROASTING & CO.」の豆を使ったこだわりのもの。ドリンクを注文すれば、窓際のテーブルで店内の本を読みながら休憩することもできます。金曜日から月曜日までの4日間、週末を中心に営業中です。

©2018 TABI LABO

オーナーは、浜松出身で写真家や映画監督としても活躍する若木信吾さん。「いつか本屋をつくりたい」という思いから、2010年に浜松市内で路面店を開始。

KAGIYAビルに2店舗目の「BOOKS AND PRINTS」をオープンし、作家の西加奈子さんの絵画展や地方をテーマにしたワークショップなども積極的に開催しています。また、店内企画も月に一度アップデートしていて、浜松市外や静岡県外からのリピーターも多いそう。

店長の新村さんは言います。

「ここは、新しいカタチの観光案内所みたいなものですね。お客さんに、僕らなりの浜松の魅力を伝えられたらいいなって思うんです」

この8年で、地元や県外の人を巻き込みながら、徐々に「浜松を訪れるきっかけ」をつくってきた「BOOKS AND PRITNS」。魅力的な新しいものを発信するだけではなくて、訪れた人たちに浜松の魅力を伝える役目も担っています。

©2018 TABI LABO
4月に開催された「SNS読書会」。イベントのテーマに合わせて選ばれた本も並びます

お店を出るときに、ふと気になって手に取ったのは、リチャード・ブローティガン著の『アメリカの鱒釣り』。4月の店内イベントで、松浦弥太郎さんが長く愛読している本のひとつとして紹介されていた1冊でした。新しい本に出会えるワクワク感が、くせになりそう。

浜松観光では、ここを目的にするのも楽しいし、困った時には駆け込んでみても大丈夫。「美味しい鰻屋さん、どこですか?」って、新村さんに聞いてみてください。

©2018 TABI LABO
オーナー、若木信吾さんの写真集『TIME AND PORTRAITS』
©2018 TABI LABO
定期的にポップアップストアを企画

「BOOKS AND PRINTS」
住所:静岡県浜松市中区田町229-13 KAGIYAビル201
TEL:053-488-4160
営業時間:13:00〜19:00
定休日:火、水、木
公式HP:http://booksandprints.net

40年以上もKAGIYAビルを見守ってきた
「喫茶 さくらんぼ」

©2018 TABI LABO

20〜30代の若い世代が経営する店舗が多いなか、大澄富子さんはこのビルや浜松の街の移り変わりを見ながら「喫茶 さくらんぼ」を40年以上も切り盛りしてきました。

道路沿いなのに静かな店内。天井が高いせいか、7坪とは思えないほどに圧迫感がなくゆったりとできます。

1978年にオープンしたさくらんぼの内装は、当時からほとんど変わることなく、壁には40年来の常連さんからもらったという写真や絵が飾られています。「ここはお客さんのお店だからね」と大澄さん。

店内には、年季の入ったメニューが掛けられています。

「値段も当時と同じ。その分だけ、内装にもお金はかけてないからね(笑)」

©2018 TABI LABO
人気メニューは特製ホットサンド(700円)や、オムライス(600円)

学生やKAGIYAビルで働いている人たちも、フラっとやってくるそうです。カウンター越しに話を聞いてくれる大澄さんは「KAGIYAのお母さん」のような存在。

「ふぅ〜」と、ひと息つきたいときに訪れたい喫茶店です。

「みなさん若いし活気があって、同じ空間にいるだけでも元気がもらえますね」

40年以上浜松の街を見てきたという大澄さん。KAGIYAビルのテナントが埋まっていくにつれ、少しずつ人の流れが戻ってきているのを感じているとか。

ここを浜松観光のスタート地点にしてみると、これまで知らなかった魅力を発見できると思います。

KAGIYAのお母さんは、まだまだ現役。

「動けなくなるまで、お店に立ってますから」

©2018 TABI LABO
通りに面した入り口の「さくらんぼ」がかわいい
©2018 TABI LABO
取材があるから、とテーブルの花を新調してくれたらしい
©2018 TABI LABO
この看板が開店のお知らせ

「喫茶 さくらんぼ」
住所:静岡県浜松市中区田町229-13 KAGIYAビル1F
TEL:053-453-6809
営業時間:10:00〜19:00(日祝13:00〜19:00)
定休日:第二、第四水曜日

後編につづく。

Top image: © 2018 TABI LABO
取材協力:浜松市
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。