浜松のKAGIYAビルに潜入。“新しい” うつわ屋と雑貨屋へ(後編)

静岡県浜松市の丸八不動産が手がける、KAGIYAビル。JR浜松駅から徒歩10分と、街の中心部に位置するこのビルには今、個性豊かなお店がたくさんあります。

空き室だらけだったこの4階建てのビルは、2012年に “ショップ&ワーキングスペース” としてリニューアル。今では12店舗全てが満室になり、全国からお客さんが訪れるビルになったそうです。(前編はこちら)

後編の今回は、「Rohan」と「Newshop HAMAMATSU」という器(うつわ)屋さんとシェアスペースを紹介します。浜松市外出身の店長さんたちに、KAGIYAビルの魅力について聞いてきました。

若手作家の器を全国から集める
「Rohan」

©2018 TABI LABO

矢印の案内にしたがって、ビル3階の奥の奥へ。うっすらと暗く、図書室のような静けさの「Rohan(ロハン)」には、店長の鈴木林太郎さんが全国から集めた器が並んでいます。

「コンセプトは、“生活” です」

Rohanが取り扱っている器は、だいたい数千円から1万円程度のもの。器には高級なものもありますが、それだとどうしても “生活” から離れてしまうので、あくまでもRohanでは日常使いができる手頃な器を選んでいるそうです。

静岡のとなり、愛知県豊橋市出身の鈴木さんは、学生時代に器の魅力に惹かれ始めました。東京でひとり暮らしをしていて寂しいとき、そばにあったのが器。使えば使うほど愛着が深まる器から温かみを感じ、ホッとしていたんだとか。

作り手の “人”を感じるかどうかも、器を選ぶときの大事なポイント。次の時代を担っていく若手陶芸家の作品を探すため、月に1〜2回は地方を巡っているそうです。

©2018 TABI LABO
店長の鈴木さん。セレクトの基準は「同時代性を感じるもの」だとか

「KAGIYAビルの他のお店の人たちとは、近からず遠からずの関係ですね。お互いがちょうどいい “おんぶにだっこ” みたいな。このゆるい助け合いがあるところが好きなんです」

器が売れたら、その売り上げの一部を持って1階の喫茶店にコーヒーを飲みにいくという鈴木さん。そんなビルの中のつながりを見ていると、ここはそれぞれが好きなことをやりつつも、ほどよくお互いを気にかける「現代版の長屋」みたいなところだなと思いました。

人口約80万人の政令指定都市である浜松市は、ある程度のモノやサービスには事足りて、関東地方や関西地方へのアクセスも良いところ。鈴木さんは、この「ほどよい」部分が気に入っていると言います。

せっかくなので両親にプレゼントを買おうと、「湯呑みセット」を購入した取材スタッフに鈴木さんがひとこと。

「8万円になります」

えっ……。なんか値段もリアルだし、真顔でボケるから分かりづらいんですけど……(実際は6000円ぐらいでした)。 会話の所々で冗談を挟む鈴木さんのゆるくてほどよい感じも、KAGIYAにマッチしているのだろうなって思いました。

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小ぶりな湯飲みや、ぐい呑みなら手頃な価格で手に入る
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鈴木さんが最近好きだという作家『おおやぶみよ』さんのガラス。とろみのある影が特徴的
©2018 TABI LABO
購入した器はロゴ入りの包み紙で包装。「Rohan」って読めますか?

「Rohan」
住所:静岡県浜松市中区田町229-13 KAGIYAビル305
TEL:053-456-9393
営業時間:12:00〜19:00
定休日:水、木
公式HP:http://rohan-hm.com

ここは “トライする人” に優しい街
「Newshop HAMAMATSU」

©2018 TABI LABO

「Newshop HAMAMATSU」は、年間1万円の会費を支払えば、誰でも100円で1タイル分のスペースがレンタルできるシェアショップ。取材時の5月は、約30店舗がそれぞれの広さで出店していました。

Newshopは、店長の植野聡子さんも運営に携わっている、浜松を拠点としたメディアプロジェクト「Untenor」が運営。個人でテナントを借りて出店するのは、お金がかかるしハードルも高い。そこで、場所さえシェアすれば出店を諦めていた人たちも挑戦できるのではないか、と思ってサービスを始めたそうです。

「生き物と生ものじゃなければ出店できます(笑)」

©2018 TABI LABO
杉材を台として商品が並ぶ。お店にある杉材だけで家一軒が建つとか

様々な高さの杉材に並んでいるのは、マグカップや雑誌、小物などさまざまで、商品によってはオーダーメイドも取り扱っています。オンラインショップもあるので、テレビやネットで紹介され、予想より多く売れるものもあるそうです。

植野さんは、静岡県の伊東市生まれ。浜松市内にある静岡文化芸術大学へ進学し、この街に引っ越してきたそうです。もともと人を繋ぐことに興味のあった植野さん。卒業後も浜松に残りました。

「浜松は、“よくわからない人” にも優しい街だから」

浜松は、新しいことに挑戦する人たちを見守ってくれる街だといいます。だからここで「Newshop」をやっていきたいのだと。

街に活気を呼び戻す、新しいものを受け入れるスタンス。そして、“よくわからない人” にも優しいということの最たるものが「KAGIYAビル」なんだと思います。

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Newshopで700部販売したという自費出版の『色彩の手帳50のヒント』。出版社からの出版も決定
©2018 TABI LABO
タイルの面積を守れば、天井まで伸びる縦の空間は自由
©2018 TABI LABO
「オンラインショップもありますが、店頭にも遊びにきてほしいです」と植野さん

「Newshop HAMAMATSU」
住所:静岡県浜松市中区田町229-13 KAGIYAビル102
TEL:053-451-0855
営業時間:11:30〜19:30
定休日:火〜木
公式HP:http://newshop-hmmt.com

Top image: © 2018 TABI LABO
取材協力:浜松市
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。