まだまだある「だれも知らない日本の絶景」を探す旅

今この瞬間、カメラを持っていれば……

って思うこと、ありません? 油断していると、スマホもカメラもリュックの中に入れっぱなしでタイミングを逃した! なんてこともあるでしょう。いや、なにが言いたいかって、そこがどんなに有名な写真撮影スポットだとしても、そのときにしか出会えない、とくべつな光景に出くわすことが多々あるなあ、っていう。

この4枚は、そんな写真が集まる、経産省が公開したユーザー投稿型の写真共有サイト「FIND/47」にアップされた中から選んだ一部。綺麗な景色が盛りだくさん。トップ画像は2018年第1期(12/01~02/28)のQUARTER AWARDを受賞した作品です。

<受賞作品へのコメント>

 

伊藤菜衣子
こんなにも美しく(暮らしていれば大変なほどに)積雪する日も、列車は力強く走っているのですね。そして、列車が走るためのすべての人々の営みを想像して、たくさんのドラマがあるんだろうなぁ、と、興味を掻き立てられました。

林千晶
どこまでも広がる雪景色の中、橋梁にさしかかる二両編成のローカル電車。なんともドラマチックな瞬間だ。同時に、この電車に乗り合わせた人のことを想像せずにはいられない。そこではきっと、オリエント急行殺人事件のように非日常のできことが起こっていたに違いない。

──『福島県 只見川第一橋梁』FIND/47より引用

このサービスは、47都道府県、津々浦々の絶景が集まっていて、写真がすべて無料でダウンロード可能なうえ、条件に従ったクレジット表記を行えば商用利用することもできます。

一般ユーザーが投稿したクオリティの高い写真と、観光地の基礎情報や外国人向けのサービスをリンクさせる目的があるので、行きたくなる魅力ある場所を伝えたり、見た人がよりダイレクトに情報を深掘りできる、情報サイトとしても便利になる予定。

写真を投稿すれば、多方面で活躍中のこの6人に評価してもらえる可能性もアリ。

 

<審査員>

石川直樹(写真家)
伊藤菜衣子(暮らしかた冒険家)
ナガオカケンメイ(デザイン活動家)
林千晶(株式会社ロフトワーク代表取締役)
平田オリザ(劇作家・演出家)
ピーター・バラカン(ブロードキャスター)

 

ちなみに、ここまでに紹介した4点の作品を撮影したのは早川晃市さん。サイトのコンセプトに共感して写真を投稿しているユーザーのひとりです。これまでにWEEKLY AWARDを7度、今回はQUARTER AWARDを受賞。とっても優秀な成績の持ち主。

なのですが、お話を聞くとものすごく写真歴が長い! ってわけでもない様子。大事なのは、きっとその熱量と行動力なのでしょう。お話を聞いてみたら、ハッとさせられることがまあ多いこと……。

©FIND/47

早川 晃市さん(61歳)
新潟市在住の会社員。写真歴は3年半ほど。週末は風景写真を撮りに撮影スポットへ出かけている。使っているカメラは、Canon EOS 80D。そのほかの投稿作品も必見。よく来るという福島潟にてインタビュー。

「受賞は意識していなかったのでびっくりしました。とくに林さんのコメントは、いいなあって嬉しくなりましたよ。イメージを膨らませて評価してくださった。写真家なら、こうは書かないのではないでしょうか。

本格的に写真を始めたのは、3年半くらい前なんからです。綺麗な風景写真を見て、わあーって感じる瞬間があるじゃないですか。すると撮りたくなって土日でパッと現地に行く。

ここ福島潟も、比較的波がたたないから、水面が光の角度で金色に輝いたり、雪景色で真っ白になったりするんです。通えば通うほど良い写真が撮れる。自然ってそうだと思うんですよね。通った回数だと思います。遠方はなかなか難しくて、年に2回ほどしか出かけられないのですが」

 

60歳に近づくにつれ、だんだん時間ができてきたという早川さん。写真雑誌を見て、おもしろそうだなと興味を持ち、年末セールで機材を買い、週末のお休みにさまざまな撮影地を訪れるようになりました。

SNSや写真共有サイトも活用していますが、いいね! で終わって流れてしまうだけじゃもったいないという思いから、フリー素材として作品を使ってもらうことで、ひろがりを期待できるサービスに共感し、写真を投稿しているとか。

 

 

©FIND/47

「写真は足で撮るって言うでしょう? すでに知られている場所に何度も撮りに行くわけですけれど、都度まったく違う景色が現れます。

FIND/47はそれが見えますから、格好良いことを言うわけではないですが、現地に行けない人たちが写真を見て少しでも行った気分になったり、海外から来る人が増えるきっかけになれたら、そういうことに協力できたらいいなあと思っています。

うわーこんなことが世の中で起きているのか! と目の前の景色に驚きながら、そういった美しいものを、さらに美しく撮りたいですよね」

 

 

早川さんが富士山を撮影しに行くときは、早朝に出発、昼過ぎに到着した後、夕・夜・朝と、なかなかハードなスケジュールで撮影をこなすそうです。何度も行けるわけではないから欲張ってしまうとか。

そのあと1週間くらいはぐったりしていますと笑いながら教えてくれたのですが、風景写真のどんなところに魅力を感じているのでしょう?

 

 

©FIND/47

「やっぱり、この瞬間はまだだれも知らないだろう、という自分だけの景色を探していますよね。

夜中に月と一緒に撮ったらどうだろうかとか、天候や雲の動きをアプリで調べながら、こう撮ろうというイメージを組み上げるんです。風景のなかに溶け込んでいる情景から、想像を掻き立てられるような写真が撮りたいでしょう? もしかしたら、今回受賞した作品も、そういうところに物語性を感じてもらえて、評価をしていただけたのかなあと想像します。

はじめは自分が良いと思う写真を撮りたかっただけでした。今でもそれは大切ですが、最近は新潟のいいところを発信したいという気持ちも出てきています。人に評価されるようになってから意識が少し変わってきたかもしれません。

じつは、写真の仕事が舞い込んでこないかと、狙ってもいるんですよ。夢みたいな話だし、どうすればいいのかもわかりませんが。今は新潟県内を走り回っているのだけれど、いつか世界を走り回って撮ってみたいな、って。

写真1枚でそうなる可能性はあるでしょう? ある人がこの人に頼みたい!ってなったらきっと。なかなかこれが30-40代の時に写真家に転身するかどうかって考えると、うーんとなっちゃいますけれど、わたしは今61歳で仕事もいいとこもう終わりに近いから、そういうところでやっていけたらいいなと思っています。

良い評価を受けるのも嬉しいし、たくさんの人に見られるのも嬉しいけれど、もし自分の写真が広告などに利用されているところを街角で見かけたら、自慢するわけではないけれど、ニヤッとするでしょうね(笑)」


 

たしかに、自分の写真がバーンと街角の壁面を飾ったら……と考えると、少しウズウズしてきます。腕試しに参加してみるのもいいかもしれません。

できることなら車でいろいろな場所を訪れながら写真を撮る生活を送ってみたいとキラキラした目で語る早川さん。だれも知らない日本の絶景を探す旅は、まだまだはじまったばかりなのです!

 

Licensed material used with permission by Koichi-Hayakawa, FIND/47
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。