まだ食べてほしくない。被災時に役立つ「備え梅」に込められた想い

「大きな災害がきた時のために備えましょう」。この言葉が心からピンとくる人は、もしかしたら、被災の経験がある人だけかもしれません。熊本地震で避難生活を送った私は、地震以降、備えるということを自分ごととして捉えるようになりました。
 
だからこそ、「デザインがかわいい」とか「美味しそう」とか、防災グッズに対するとっかかりは何だっていいと思っています。この「備え梅」が一人でも多くの人の味方になってくれることを願い、ここに紹介したいと思います。

「次の震災のために」

© 2017BambooCut

「備え梅」とは、大きな災害が起こった時のために備えておく梅干しのこと。BambooCutの代表である竹内順平さんが「備え梅」を企画したのは、2016年4月に起こった熊本地震がきっかけでした。

「避難生活で歯を磨くことができなかったり、食べるのが難しかったりしてよだれが出なくなり体調を崩すお子さんがいるという話を聞いた時、梅干し一粒で状況が変わることもあるのにな、と思いました」

2014年から梅干しに関わる仕事をし、向き合ってきた竹内さんならではの発想です。

一般的に、災害時に救援物資が分配されるまでに3日間を要するといわれています。この3日間を乗り切るために考えられたのが「備え梅」です。梅干しは「クエン酸」含有量が高く、「ミネラル」も豊富。そこに、酸っぱいもの特有の「よだれ(唾液)」の分泌をうながす働きも相まって、梅干しには、安定した体調を維持する力があるといわれています。農林水産省も、災害時や緊急時における梅干しの有用性を推薦しています。

© 2017BambooCut

「備え梅」の基本の形はこうです。巾着の中には、3日間で1粒ずつ食べられるように3粒と、プラス1粒が「お試し梅(梅干しを食べたことがない人や味が知りたい人の試食用)」として入っています。個包装にこだわり、普段からお守りのように持ち歩くことができるように携帯時の収納性も考慮されています。

備災食に
美味しさはいらない?

© 2017BambooCut

「備え梅」の梅は、東京都世田谷区にある梅専門店「延楽梅花堂」の乗松祥子さんが手間ひまかけて漬けたもの。江戸時代から続く幻の梅「杉田梅」を使用し、秘伝の塩としそだけを使ってシンプルに作りあげています。

口に入れた瞬間、身体中の細胞が動き回り、ざわつく感じ。はじめて食べた時は、衝撃的ですらありました

全国各地、300種以上の梅を食べてきた竹内さんが心底惚れ込み「備え梅」の梅として選んだんだそうです。



でも、避難生活を送っている時に“美味しいものを食べる”ということを望んではいられないというのが正直なところ。それでも美味しさにこだわるのには、ちゃんとした理由がありました。

東日本大震災、熊本地震を経験した我々は、もはや「金輪際、災害は起きない」などとは誰しも思っていないはずです。だからこそ、無味乾燥な機能だけを求めた防災・備災食ではなく、「美味しく」備える

悲しいかな「備え梅」が誕生した2017年以降も、豪雨や地震などの大きな災害が何度も起きています。

「備え梅」は、備えるという前提のもとで活躍してくれるアイテムです。だからまずは「身近に置いておきたい」と思ってもらうことで備えるハードルを下げるために、美味しさも追求しているんですね。

本当は3年後に
笑顔で食べてもらいたい

© 2017BambooCut

「備え梅」の賞味期限は3年です。

賞味期限である3年後に、日常のなかで備え梅を食べてくださったのなら、幻の梅の美味しさを味わっていただければ幸いです。
万が一、震災などの非日常で必要としてくださるのなら、備え梅の力強さが生きる希望につながることを心より願っております

Top image: © 2017BambooCut
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。