いつの日か起きる大災害に備えを。今あるものだけで家族が1週間暮らす「防災クッキング」

東日本大震災から6年。

自然の脅威を見せつけられたあの経験から、私たちは何を学んだのか。そう遠くない将来にまた起こると言われている「震災」に対して、どれほど備えられているか。

まずは自分を含めて家族が一週間暮らせる備蓄について、1995年の阪神・淡路大震災でご自身も被災経験を持つ防災クッキングアドバイザー、鈴木佳世子さんに話を聞いた。

防災食は
「命と心をつなぐ」もの。

温かいものを食べる、いつもと同じような食事をする、基礎栄養素を摂る、といった「ふつうの食事」がどれほど被災者の心を救うかを身をもって体験した鈴木さんは、セミナーや講演の際、あえて強い表現を使うという。

まず鈴木さんは、緊急時に備えて、ふだんの食材選びを紹介してくれた。テーマはずばり「自宅にある食材だけで家族が一週間暮らせる備蓄」。

とはいえ、単純に大量の食材を備蓄しておくのは容易ではない。しかし難しく考えすぎることもなく、普段の食事にも活かせて、かつ万が一の時にも役立つような食材をストックしておけば良いだけのことだと言う。

・食べるために包丁が要らない
・常温で保存可能
・軽くて持ち運びやすい
・栄養が摂れる
・火がなくても食べられる

そんな条件を叶えてくれるもの、それは「乾物」

例えばわかめ、切り干し大根、高野豆腐、お麩、乾麺、クスクス、雑穀、もっと身近な米や餅も乾物なわけで、普段の買い足しと防災食を兼ねた食材の両立も、難しくはなさそうに思えてきた。

大切なことは、被災時に初めて乾物を使う、なんてことがないように、普段から食べ慣れておくこと。日頃の買い足しが、そのまま備えになると思えばハードルはぐっと低くなる。

ただ、水分は忘れずに1週間分を確保しておきたい。

年齢によって必要量が異なるが、一般的には

「体重 ×(A)=1日に必要最低限の水分量(ml)」

と言われており、Aに当てはまるのが幼児なら100〜120ml、こどもは50〜100ml、成人は50ml。例えば体重50キロの成人なら、50kg × 50ml =2,500→1日2.5リットルの備蓄が必要、となる。

非常時の調理方法は
定期的に練習を。

乾物は調理が簡単とはいえ、火が思うように使えなかったり、洗い物がままならない状況での調理はどうしたらいいのだろうか?

もしもカセットコンロなどでお湯が沸かせる場合は、お湯を活用した湯煎(ゆせん)料理が良いという。

たとえば、厚めのビニール袋に溶き卵と醤油やめんつゆを入れて口を縛り、お湯の中に20分入れておけば、だし巻き卵のような仕上がりに。フリースや毛布で鍋を包めば保温効果も高まり、調理の仕上がりも早くなる。

白米1合とお水をビニール袋に入れて熱湯に20分沈め(鍋底につくとビニールが溶けるため、お皿を沈めると良い)そのあと、15分ほどお湯のなかで蒸せば、白米だって炊ける。

他にも、お水やトマトジュースと一緒に好みの乾物や缶詰をビニール袋に入れ、カレールーを溶かし入れて、20分お湯に浮かべればカレーに。

また、魔法瓶のような保温能力のあるポットやスープジャーに熱湯と豆を入れて7〜8時間置いておけば煮豆ができ、衛生状況の悪化などで免疫が下がったり、栄養バランスを崩しやすい環境のとき、また、柔らかい食事を好むシニアにも優しい一品ができあがる。

このような調理法は、非常時をイメージして試してみる機会もあると良い。過去の震災を振り返るこの時期に、家族や友達と一緒に試してみてはどうだろうか。

TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。