タコスのみで勝負する店@三軒茶屋

タコスのみで勝負する店@三軒茶屋

昨年来、「タコスは専門店で」の動きが加速している。メキシコ料理屋というくくりからも脱し、タコスのみで勝負する店だ。よく知る肉、レタス、チーズのそれとは明らかに一線を画す独創的でバラエティ豊富なタコスがウリ。

酒のつまみに好き勝手注文するもいい。が、首尾一貫ストーリーのあるコース料理としていただくのも妙味。三軒茶屋「ロス タコス アスーレス」はそれが叶う店だ。

旬の素材がタコスの中に活きる

©2019 HIROMU INOUE

天然ブリと自家製チポトレマヨネーズのトスターダ。

日本各地の地場素材を用いて、タコスで季節感を演出する。懐石とメキシコ料理のフュージョンと言えなくもないが、オーナーシェフのマルコ・ガルシア氏は、それを手のひらほどのトルティーヤの上だけで表現してしまう。

例えば、この時期のアペタイザーには旬の魚を使ったトスターダ。

パリッと揚げたトルティーヤに、程よく脂ののった天然ブリとフレッシュなアボカドがオン。セビーチェのように魚介のマリネを具材にしたタコスはあれど、切り身がまんま乗っかるとインパクトが先行する。

一見アンバランスな組み合わに均整を持たせるのがサルサだ。燻製唐辛子のチポトレにすだちとマヨネーズを加えたソースが、タルタルのように生魚を包み込む。

©2019 HIROMU INOUE

北海道産ワカサギのグリルタコス。ハバネロサルサはお好みで。

©2019 HIROMU INOUE

美桜鶏のカルニータスと菊芋サルサのタコス。

ペアリングもオススメ。

コロナやテカテといった軽い飲み口のビールもいいが、王道を外すのもいい。ワインもしかり。メスカルという選択肢もあるけれど……ならば、フレッシュで華やかな芳香の吟醸酒をもってくる。これが意外にも前述のチポトレのコクに合う!3口めからは快感に変わる。

スープをはさんで最後のデザートまで。仕入れによってネタが変わる寿司屋のように、夜はおまかせのタコスずくしを堪能。これが「斬新」「新感覚」だけならば、アヴァンギャルドな創作タコスで済む話。けれど、マルコさんの視線は、単なる“創作”だけに向けられたものじゃない。

革新の具材を支える“屋台骨”
不変的なトルティーヤの味

そもそもタコスの定義は、トルティーヤ、サルサ、具材とシンプルな構成。3つが組み合わさればすべてタコス。ということになる。自由度が高い。

とはいえ、自由気ままでうまくいくはずはない。
「お寿司だってそうでしょ?酢飯に乗せれば何でもおいしくなるワケじゃない。なによりシャリがマズかったらお寿司として成り立ちませんから」。

つまり、肝心なのはトルティーヤだ。

©2019 HIROMU INOUE

収穫量の安定しない、メキシコ伝統農法で栽培された在来種のブルーコーンを毎朝製粉機で挽き、オーダーが入ってから生地をこね、プレスし、一枚ずつ焼き上げる。できたてアツアツのトルティーヤはいくらか土くさい。舌で感じる甘味こそ少ないが、噛みしめていくうちに鼻の奥で甘くひなびた香りになる。

手間がかかろうと、この味がロス タコス アスーレスの生命線だ。

「ブルーコーンならばOKというものじゃない。失われようとしている伝統的な食文化をきちんと伝えたいんです」。マルコさんは強調する。メキシコの都市部でさえ、近年こうしたコーンは徐々に減ってきているという。

店名に配した「Azules(=青)」は信念の表れ。斬新に映るトッピングやサルサを支える土台は、トラッドそのものだった。

TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。