ターゲットは6歳児。「化粧品のレプリカ」で子供を魅了する戦略が話題に
10ドルで未来の顧客を獲得する──そんな大胆な戦略を打ち出したのは、アメリカ発のコスメ専門店「Ulta Beauty」だ。
ターゲットは、なんと6歳の子供たち。販売しているのは、本物そっくりのミニチュアコスメが入ったカプセルトイだという。
リアルすぎる
ミニチュアコスメの衝撃
「Bloomberg」によれば、彼らが販売しているのは、玩具メーカー「Zuru Toy's Mini Brands」とのコラボ商品である「ミステリーボール」。10ドルで販売されているこのボールのなかには、リップやアイシャドウなど、人気の化粧品のミニチュアが入っている。
注目すべきは、その精巧さだ。本物と見紛うほどのリアルな作りで、子どもたちの心を掴んで離さない。彼らの戦略は明らかで、幼い頃から自社商品に親しみを持たせることで、将来顧客へと育成しようということだろう。
そして、この戦略はすでに成果を上げ始めている。取材に応じたKym Robinson氏は、10歳の娘がミステリーボールで遊んだあと、実物の「ハイドロゲルアイパッチ」に興味を示すようになったと語っている。
子ども向け美容市場の拡大と「倫理」の壁
「NIQ」のデータによると、2023年の6歳から12歳の子どもを持つ家庭におけるスキンケア用品への支出は、前年比27%増の24億ドルに達した。子ども向け美容市場の急成長は、Ultaの戦略が市場トレンドを的確に捉えていることを裏付けている。
しかし、この流れに懸念を示す声も少なくない。子ども向け美容市場の拡大は、倫理的な問題と切り離せないからだ。幼い子どもたちをターゲットにしたマーケティングは、過剰な美容意識を植え付ける可能性も孕んでいる。
「BBB National Programs」のDona Fraser氏は、Ultaの販売戦略に対し、「6、7歳の頃から完璧な美しさを求めるプレッシャーをかけることになるのではないか」と警鐘を鳴らす。
「かわいい」の先にあるもの
今回のUlta Beautyの事例は、私たちに重要な問いを投げかけている。それは、子どもたちの純粋な「かわいい」という気持ちを尊重しながら、企業として、そして社会として、どのような倫理観を持って接していくべきかという問いだ。
子どもたちの未来を左右する問題だからこそ、私たちはUltaの戦略の是非を問うだけでなく、多様な価値観を育み、健全な成長を促す方法を真剣に考えていかなければならない。