スーツの「ジャケットの襟」に「穴」がある理由
クローゼットやラックに吊るされたスーツのジャケットを見てみてください。左のラペル(襟)に穴が開いている、もしくは穴に見せかけた“糸かがり”のようなものが施されていませんか?
会社員の人なら社章を、国会議員や弁護士なら議員バッジや弁護士バッジをそこにセットしているのを見たことがある人も多いと思いますが、あの穴はもともとはジャケットの第一ボタンを通すボタンホールだったんです。
かつてジャケットは詰襟の学生服のように襟元までボタンを留めて着られており、時代を経てジャケットが現在のデザインになってからも、その名残りとして施されているんです。
ちなみに、この穴にはもうひとつの呼び名があります。
その名は──「フラワーホール」。
ジャケットが現在のようなデザインになった19世紀頃、ヨーロッパではプロポーズの際に、男性が意中の女性に花束をわたし、求婚を承諾した女性は受け取った花束のなかから一輪の花を抜き取って男性に返すという慣習がありました。
そして、求婚を受け入れてもらった男性は、ラペルの穴に受け取った花の串を差し込み、愛する女性と結婚できる喜びと幸せな気持ちを周囲にアピールしたことから「フラワーホール」と呼ばれるようになったのだとか。
今ではビジネスなどの現場でしか使われることのないラペルの穴に、こんなロマンチックなストーリーがあったなんて……ファッションの歴史と変遷は、やっぱりすごくおもしろいです。
※上記、諸説あり。
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