ミリタリーが起源の「特殊なボタン」が生まれた理由
ボタンに開いたふたつの穴に幅広の頑丈なテープを通して縫い込むことで固定する「パラシュートボタン」。
もともと軍隊の空挺部隊が着用するジャケットなどに採用されていたことからそう呼ばれるようになったのは、ご推察の通りです。
それにしても、なぜこのような形状のボタンが誕生したのでしょうか?
そもそも、洋服のあらゆる部位のなかで、もっとも脆弱なのがボタンの糸付け部分です。
そのため、洋服の内側から金具でボタンを留めるチェンジボタンや機械を使った強力な糸付けを可能にした猫目ボタンなど、これまで様々な仕様やボタンが開発されてきました。
ひとつのボタンが取れてしまうことで命に危険が及ぶかもしれない戦地において、降下中にボタンがパラシュートなどに引っかかっても千切れる心配が少ないパラシュートボタンの開発・採用は、軍と空挺部隊にとっては必然だったといえるのです。
また、危険を伴う作業の際に着るウエアには“脱ぎやすさ”も大事な要素のひとつです。
落馬した際、馬具に引っかかった洋服を素早く脱げるようにスナップボタンを採用したウエスタンシャツや、荒れ狂う海に落ちたときでもグローブをはめたままボタンを外すことができるダッフルコートなどと同様に、パラシュートボタンが採用されている洋服は、襟元をつかんで下方向に引っ張ることですべてのボタンが一息で外せるように設計されているんです。
現在販売されているパラシュートボタンのアイテムは、デザイン重視のタイプがほとんどなので、乱暴な扱いはおすすめしませんが、その構造をじっくりと観察してみると、実用性を研ぎ澄ませた作りであることがきっと伝わるはずです。
※上記、諸説あり。
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