「ラグランスリーブ」が生まれた理由
人気のスポーツカジュアルスタイルが簡単に演出できる「ラグランスリーブ」のTシャツやカットソー。
首周りのリブから鎖骨、脇の下、肩甲骨のうえをグルリと走る切り替えが特徴のこのディテールは、様々なスポーツウェアに採用されていることからもわかる通り、肩や腕の動きを抑制しないための構造なのですが、その起源は1800年代の中頃までさかのぼります。
1816年、英雄ナポレオン・ボナパルト率いるフランス軍が、イギリスを中心とした連合軍と熾烈な戦いを繰り広げた「ワーテルローの戦い」。
戦いに敗れたフランス皇帝・ナポレオンが南太平洋の孤島・セントヘレナに幽閉されるきっかけとなったこの戦争で、イギリス陸軍の軍人であり政治家のフィッツロイ・ジェームズ・ヘンリー・サマセットは右腕を失います。
後に彼は、戦争で手や腕を欠損してしまった兵士のために、脱ぎ着しやすく動きやすい洋服のパターンを考案するのですが、それが時を経てスポーツウェアのディテールに転用されるようになったのだとか。
ちなみに、フィッツロイ・ジェームズ・ヘンリー・サマセットは、数々の功績を讃えられ、1852年に新設された連合王国貴族の爵位を受けています。その爵位の名は──「ラグラン男爵」。
つまり、ラグランスリーブとは、戦争で腕を失くしたラグラン男爵が、腕や手を怪我してしまった兵士のために生み出した、悲しくもたくましい歴史をもったデザインだったのです。
今ではスポーティでカジュアルなイメージが強いアイテムにこんな過去があったなんて......洋服の歴史は、人類の歴史そのものといえるのではないでしょうか。
※上記、諸説あり。
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