アメリカの手袋が「ディアスキン<鹿皮>」を使っている理由

意味や理由、歴史を知れば、ファッションは今よりもっと楽しめる──。誰かに話したくなる、ファッションやアイテムのあんなこと、こんなこと。

寒くなると欲しくなるのがレザーの手袋。レザーアイテムに用いられる、もっともポピュラーな素材として「牛革」が挙げられますが、じつは、こと手袋に限ってはあまりおすすめできません。

牛革は非常にタフである一方、硬く、重く、指先の動きを邪魔しがちだからです。

ヨーロッパでは、羊やペッカリー(イノシシの仲間)、牛の革を薄く漉(す)いて起毛させたスウェードといったさまざまな素材が手袋に使われ、なかでもペッカリーの手袋は高級品として知られています。

一方、アメリカではディアスキン(鹿革)を使うのが一般的。鹿の革などと聞くと高価なイメージをもつ人がいるかもしれませんが、手に取りやすいリーズナブルな価格で販売されています。

油分をたっぷりと含んだディアスキンは、雨に濡れても硬くなりにくく、保温性も高く、柔軟性と耐久性に優れた手袋に用いるにはうってつけの素材。

日常の防寒はもちろん、アウトドアでの使用などにも適しています。

それにしても、ヨーロッパではさまざまな動物の革を使うのに対し、なぜアメリカではディアスキンをそれほどまでに重宝がるのでしょうか?

ネイティブアメリカンが伝統的に鹿皮を使用してきたという歴史的な経緯もあれば、北米に鹿が多く生息していることから調達しやすかったという事情もあるでしょうが、個人的にはアメリカならではのものの考え方が大きく影響していたのではないかと考えています。

「鹿皮で事足りているんだから、これでよくない?」

アメリカ生まれのアイテムの多くがワークギアを源流にもつことからもわかる通り、道具としての機能を満たしていればそれでいいという、アメリカらしいものの考え方──。

そんな潔さこそが、アメリカのウェアやギアの魅力だと思うのですが、いかがですか?

島倉弘光/「MAINE」企画担当

1988年創業の老舗インポートセレクトショップ「MAINE」に学生時代からアルバイトとして勤務。現在はバイヤーを務めるかたわら、オリジナルブランド「CAMCO」や「BAGGY」の企画を担当している。

【「MAINE」ホームページ】https://www.maine1988.com/

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